光を圧縮していくと急に抵抗力がなくなる不思議現象を確認
注射器やピストンに入っている空気をギュッと圧縮した経験は多くの人にあると思います。
結果は「最初は簡単に押せるけど、途中からどんどん力が必要になっていく」と記憶されているはずです。
一方で水は力を加えてもほとんど体積が変化しません。
莫大な力をかければ僅かに圧縮されますが、身の回りの品々では水の圧縮を実感できることはないでしょう。
このように、空気や水といった物質には特性に応じた圧縮しやすさが存在しますが、総じて押せば押すほど圧縮しにくくなる傾向にあります。
では光はどうでしょうか?
これまで様々な物質を圧縮してきた人類ですが、光の圧縮に必要な力を、詳細に測定したケースはほとんど存在しませんでした。
光は通信や距離の測定に使うことがもっぱらであり「光の機械的な圧力」を求められることはめったになかったからです。
そこで今回、ボン大学の研究者たちは光を鏡張りの小箱に押し込め、外側から圧縮してみることにしました。
すると最初は予想通り、押せば押すほど光は抵抗が増えていきました。
光の単位である光子には質量がありませんが運動エネルギーはあるため、光が当てられた物体は押される力が働きます。
この光による押す力を利用して現在、光速の30%まで加速可能な光学帆船(ソーラーセイル)の計画が行われています。
一方で、この光が押す力は圧縮時には抵抗力として観測されます。
そのため研究者たちが小箱の中の光子を圧縮すると、空気やガスと同じように圧縮に応じた抵抗力を生じさせました。
また小箱に詰める光子の数を増やすと(密度を増やすと)、同じ圧縮幅を得るには、より大きな力が必要になっていきました。
この抵抗力の増加は主に、小箱の中で光子が壁から壁へ跳ね返る頻度に依存しています。
光子を小箱にたくさん入れると抵抗力が上がるのも、光子の数に応じて跳ね返る頻度が増加したからです。
しかしある段階を越えて力を加えていくと奇妙なことが起こり始めます。
圧縮に必要な力が急激に弱くなり、ほとんど力を加えなくても光は圧縮が可能になっていったのです。
圧縮された光に、いったい何が起きていたのでしょうか?