MDとADHDの空想は何が違うのか?
ADHDの人の中には、空想に耽ることを原因とした注意欠陥が確認されています。
では、社会生活に支障を来すレベルの空想好き(MD)の人は、ADHDであると見なすべきなのでしょうか?
しかし研究チームによると、MDとADHDの空想には、以下の違いがあるといいます。
まず、MDは「意図的・意識的に」過剰なほど詳細な空想に自己を没入させるものです。
それにより、注意力が阻害され、日常的な認知機能に支障が出たり、不安症や孤独感といった精神疾患を起こします。
一方のADHDは、今行っているタスクと無関係な思考に「自動的・散発的に」注意が移るものです。
そのため、ADHDにともなう空想は「マインド・ワンダリング(mind wandering、心がぶらつく状態)」と表現する方が適切であると指摘されます。
本研究主任のニリト・ソファー=デュデク(Nirit Soffer-Dudek)氏は「もし、あなたの空想が、一時的な心の迷いから生じる注意散漫であるならADHDを、精巧な物語や鮮明な風景の中に強迫的に惹きつけられるならMDを示す」と説明します。
両者は確かに、注意力が低下するという点で症状に重なる部分がありますが、デュデク氏は、以前の研究と今回の研究の結果を合わせて、「MDとADHDは区別すべきである」と指摘します。
まず、以前の研究では、MD症状を示す40人の患者を集め、一人一人に詳細な臨床診断を行いました。
すると、77%がADHDの基準を満たしていたものの、大半は「不注意のみ(多動性なし)」を示しています。
またアンケート調査によると、患者は、課されたタスクに集中できない理由について、「自発的に空想にはまった結果だ」と回答しており、彼らの症状の多くは、ADHDと見なすより、MDによってよりよく説明されました。
これらの点から、デュデク氏は「MDとADHDのラベリング(区分け)が不正確なのではないか」と考えました。