「母親より仲間」は過酷な自然環境を生き抜くためだった
なぜ成長した子供の脳は、母親より仲間をの声に惹かれるか?
この疑問に対して研究者たちは、人類の祖先に求められたニーズが原因であると考えています。
人類はその長い進化の過程においてほとんどを狩猟採取生活で過ごしていきました。
狩猟採取生活においても幼児は母親の庇護に置かれますが、成長した子供たちには家族以外の仲間と共同して、食料を調達することが求められます。
人類の祖先が生活していた厳しい自然環境においては、13歳前後で「母親よりも仲間」とという選択をした子供が生き延やすく、その遺伝子を現在の私たちに伝えることができたのでしょう。
(※栄養状態により年齢は多少は変動する可能性があります)
ただ現在の工業化が進んだ人類社会において13歳は完全な子供とみなされ、反抗や早すぎる一人立ちは、ときに「好ましくない」あるいは「不良」とレッテルを貼られてします。
一方、子供たちは脳に起きている再配線のせいで、母親の声より他人の声が届きやすくなってしまっています。
子供の脳で起きている再配線と他人への興味は、子供の社会性の芽生えでもあるため、踏みつぶせば子供にとって悲惨な結果になる可能性があります。
ただ研究結果によれば希望はまだあります。
子供の脳では確かに他人の声への興味が高まっていますが、母親の声に対する脳の反応は減ることなく維持されています。
そのため、子供に対して必死に話しかけることができれば、子供の行動になんらかの矯正を行えるかもしれません。
あるいは、子供の尊敬できる他人を引き合わせてみるのもいいかもしれません。
研究者たちは今後、子育ての方法やネグレクトや虐待が、子供の脳の再配線にどれだけ影響を与えているかを調べていく、とのこと。
最後に研究者たちは、子供が声を無視したことに不満を感じる親に対して「これは脳の再配線が原因であり、正当な理由がある」と述べています。