屈折率が0に近い材料の中の光は運動量が0になってしまう
屈折率が0に近い材料の中の光は運動量が0になってしまう / Credit: Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences . In Einstein’s footsteps and beyond Zero-index metamaterials offers new insights into the foundations of quantum mechanics
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光の運動量を0にすると二重スリット実験で「しま模様」が消えると判明 (2/2)

2024.08.25 Sunday

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運動量が0に確定した光子の存在確率は無限に広がる

運動量が0に確定した光子の存在確率は無限に広がる
運動量が0に確定した光子の存在確率は無限に広がる / Credit: Canva . ナゾロジー編集部

量子の世界は不確定性原理と呼ばれる奇妙な原理によって支配されています。

量子の世界では物体は確率的にしか存在できず、位置か運動量のどちらかしか正確に知ることができません。

また不確定性原理においては、位置か運動量のどちらかを詳しく知れば知ろうとするほど、もう一方が不確定になっていくことが示されています。

不確定性原理は子供向けの科学書には、観測手段の技術的な問題であるかのように表記されることがありますが、実際には量子が持つ位置が定まらない「波としての性質」によって決まります。

そのための運動量が0だとほぼ100%確定している状況では、光の存在位置は許される限り無限に広がっていくと予測されました。

研究者たちが実際に運動量が0になった光を調べたところ、光の位置が材料内部で全く不明になっていることが判明します(これは不確定性原理が単なる観測技術の問題でないことも示します)

光の波としての性質は、光の存在確率の強弱であると言う風に説明されます。

運動量が0となり、波長が無限大になった光は、存在確率の波が消え去り、材料中のどこにでも一様に存在しうる状態となっていたのです。

そのため、二重スリット実験の干渉縞が消えてしまったわけです。

光は材料中で存在確率が一様になっている。そのため二重スリット実験の干渉縞がなくなった。
光は材料中で存在確率が一様になっている。そのため二重スリット実験の干渉縞がなくなった。 / Credit:Michaël Lobet et al.,Nature Light Science&Applications(2022)

研究者たちは、この材料を用いれば、物体を光(電磁波)による観測から完全に隠すことが可能になると述べています。

また材料内部全体に存在するという性質を利用することができれば、損失の無い光の伝達や単一の光子だけを発する光源など、さまざまな技術に適用することが可能になるでしょう。

どんなにネジ曲がっても光が伝播する光ファイバーのようなものも可能になるかもしれません。

研究者たちは最後に、アインシュタインの理論に実際の光の挙動が反したのは、屈折率0の材料を想定していなかったことが原因であり、偉大な先人の理論を進化させることができて嬉しいと述べています。

※この記事は、2022年5月公開のものを再掲載しています。

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