量子効果が生命活動に与える影響が次々に明らかになっている
DNAは「生命の設計図」としての機能があり、私たち生物の体を作るためには欠かせない存在となっています。
またDNAに刻まれた情報は世代を超えて子孫に継承され、親同じような体をした子を作ることを可能にし、種の概念を与えてくれます。
しかしDNAの構造は不変ではなく、さまざまな要因で変化してしまうことが知られています。
DNA変異は有害物質や紫外線などの化学的・物理的要因に誘発されるだけでなく、複製時の酵素反応のエラーなど生物学的な要因によっても発生します。
DNAは誕生した当初から、物理的要因・化学的要因・生物学的要因の全てから挑戦を受けてきたと言えるでしょう。
しかし量子力学と生物学との融合によって誕生した「量子生物学」の進歩により、生命活動において量子的な効果が無視できないことがわかってきました。
たとえば植物の光合成では、化合物間の間で古典物理学に反した電子のジャンプが頻繁に行われており、植物たちが量子力学を使って光合成効率を高めていることがわかってきました。
この電子の突然のジャンプは、量子世界において小さな粒子は「存在確率があやふやで場所が確定していない」ことが原因となっています。
古典物理では、安定した化合物の間を電子が移動するためには、何らかのエネルギーが必要とされます。
この必要エネルギーは「山」のような存在であり「山」を越えるエネルギーを得ない限り、電子の移動は叶いません。
しかし現実世界の電子の存在確率はあやふやであるため、存在確率が続いている場所ならば、たとえ別の化合物であっても、エネルギーの「山」をトンネルを通ったかのように無視して移動することが可能になります。
このようなトンネル効果は電子のような素粒子だけでなく、DNAに含まれる水素原子(プロトン)でも起こるとが知られています。
DNAには大量の水素が構成材料として含まれているだけでなく、2本のDNA鎖をつなぎとめておく水素結合において必須となっています。
そのため以前から、DNAの水素がトンネル効果を起こせば、DNAの分子構造にダメージを与える可能性が提起されていました。
そこで今回、サリー大学の研究者たちは、DNAにおける水素原子の量子力学的な挙動の理論解析を行うことにしました。
DNAの変異は本当に量子効果で起きていたのでしょうか?