生命進化は量子効果のお陰かもしれない
今回の研究により、量子世界の不思議なトンネル効果が、DNAの突然変異をうみだす可能性が示されました。
もしトンネル効果がDNA変異の大きな発生要因になるならば、既存の遺伝学の基本を揺るがす結果となるでしょう。
研究によって算出された互変異性体のDNA内の占有率は1.73×10のマイナス4乗となっており、この値は生物の自然なDNA変異率(~10のマイナス8乗)を大きく上回る値でした。
実際の変異率のほうが低いのは、DNA修復メカニズムなどの存在により、発生したトンネル効果が必ず突然変異につながるわけではないからであると、研究者たちは述べています。
一方で興味深いことに、一本鎖RNAのウイルスの変異率は10のマイナス4乗クラスであり、トンネル効果によってもたらされる互変異性体の出現率と極めて近似しています。
このことから研究者たちは、原始的な生命やウイルスなど核酸の修復能力が低い存在にとっては、トンネル効果は主要な変異あるいは進化の原動力の可能性があると述べています。
現在の生物の遺伝子に量子効果が起こり得るのも、初期生命の変異が量子効果に頼っていたからかもしれません。
量子生物学の急速な発展により、さまざまな生命現象と量子効果の関連性が明らかにされています。
遠くない将来、量子遺伝学や量子細胞学、量子医学、量子薬学など、生物と量子効果の関係に着目した分野が多くの人々に知られることになるでしょう。