DNAではトンネル効果が予想を遥かに上回る頻度で起きていた
謎を調べるために研究者たちはDNA塩基対の正確なモデルを作成し、DNAにおける水素原子のトンネル効果の頻度を算出しました。
結果、水素原子の移動におけるトンネル効果は、予想されていたよりもはるかに頻繁に起きており、向かい合った塩基の反対側に容易に移動することが判明します。
(※G-C間の水素原子のトンネル係数は10の5乗クラスに及びました)
また水素原子の移動が起きた場合の塩基対(G-C結合)に起こる変化を計算したところ、細胞内部の局所的な環境によって条件が誘発されると、水素原子は2本のDNA鎖の間を連続で移動していき、非常に迅速にトンネル効果を完成させました。
さらに、この変化がDNAの複製時など2本鎖が解消される直前に起こると、対になる塩基の分子構造が変化した「互変異性体」となってしまい、本来とは異なる誤った塩基を取り込む可能性が示されました。
例えば塩基Gは塩基Cと対に(G-Cと)ならなければならないにもかかわらず、別の塩基Tと対に(G-Tと)なってしまう場合があります。
研究者たちは「DNA内の水素原子は、あたかもDNAの水素結合に沿ってトンネルを掘り、別の場所に出現することができる」と述べています。
複製時に間違った塩基対が取り込まれた場合、DNAには点突然変異と呼ばれる局所的な変異が発生し、しばしば生命活動に大きな影響を与えることが知られています。