生命活動に量子効果がかかわることが次々に判明している
現在の脳科学では、ヒトの意識は脳細胞ネットワークを流れる電気信号パターンによって形成されると考えられています。
この考えでは、意識がどこからかやってきてネットワークに宿るのではなく、ネットワーク構造と電気活動が一定のパターンをとったときに「意識」が現れるとしています。
最新の研究でも、脳において特定部位の活動を遮断すると、意識が途切れることが示されました。
一方、近年になって生命活動のさまざまな領域において量子的な効果が利用されていることが明らかになり、量子力学と生物学を融合させた「量子生物学」という新たな分野が成長しつつあります。
特に光合成に対する量子生物学の貢献はめざましく、光エネルギーから栄養(化合物)が作られる過程では、電子が量子的なふるまいによって突然位置を変え、従来の古典物理学では説明困難な化学反応を実現している様子が示されています。
(※古典物理学ではエネルギー的に困難であると考えられる電子の移動でも、電子の存在確率のあやふやさ(量子効果)を利用して実現しています)
他にも渡り鳥のナビゲーション機能、動物の嗅覚、さらにDNAやタンパク質がかかわる酵素反応など幅広い生命現象に、量子効果が関連していることが報告されています。
ブラックホールの存在を説明するにも使われる量子力学が、私たち生命の駆動原理として存在すると考えるのは、一見して奇妙に思います。
しかし量子生物学では、全ての物理現象が量子力学であるのと同じように、物理現象の一形態である生命活動も量子力学がかかわっていると考えられています。
そして先進的な脳科学者たちは、光合成が量子効果で進むのと同じように、「意識」もまた量子効果によって説明できる部分があると考えていました。
しかし「意識」が量子効果によって形成される部分があるとしても、実際に細胞内で「意識」の形成にかかわるような量子効果が起きていることを証明できなければ、科学として成り立ちません。
そこで今回、アルバータ大学の研究者たちは実際に細胞内部の部品に対して光エネルギーを与え、量子効果が出現するかを確かめることにしました。