「男性器」そっくりの植物を摘み取る人が増加中
N. ボコレンシスは、カンボジア南部カンポット州のフナム・ボカー(Phnom Bokor)山脈に自生しています。
フナム・ボカーは近年、大規模な開発が行われたことで、地元民や観光客がアクセスしやすくなりました。
それもあってか、N. ボコレンシスを摘み取ってしまう人が増えているようです。
こちらは、カンボジア環境省が動画のスクリーンショットを添付して警告した投稿。
本文には、「彼女たちのしていることは間違っています。今後二度としないようにしてください。自然を愛して頂けることには感謝しますが、それを摘み取って無駄にしないようしてください」と書かれています。
葉っぱの中は「落とし穴」に
植物は一般に、土壌中から根っこを通じて栄養分を吸収しますが、所によっては栄養分の低い土壌もあります。
動物なら、そんな場所でも自ら動いてエサを探しにいけますが、一カ所に腰を据える植物ではそうはいきません。
そこで誕生したのが、虫をおびき寄せて食べてしまう「食虫植物」です。
N. ボコレンシスも貧栄養の土壌で生き延びるために、特殊な罠を発達させました。
袋のような葉っぱを持ち、そこから甘い蜜の香りを放つことで、昆虫たちを誘惑するのです。
実際、専門家によると「N. ボコレンシスの葉は、近くで匂うとお菓子のような甘い香りがする」という。
香りに引き寄せられた昆虫は、葉っぱの口の周りで蜜を吸い始めますが、あやまって袋の中に落ちてしまうと、底に溜まった消化液につかまり脱出できなくなります。
あとは昆虫をゆっくりと消化して、栄養分を吸収するだけです。
N. ボコレンシスの見た目が「男性器」に最も近くなるのは、葉っぱが成熟手前でシワがなく、しっかり縦に伸びて、さらに上ブタの葉っぱが口を塞ぐように閉じているときです。
この状態でN. ボコレンシスを見ると、ほとんど男性器にしか見えません。
その形を面白がって、無暗に摘み取ってしまう人が続出するのも仕方ないと思えてしまうほどソックリなのです。
しかし、2021年に科学雑誌『Cambodian Journal of Natural History』(PDF)に掲載された研究によると、N. ボコレンシスの自然生息地は現在、農業の拡大や観光産業の発展により減少していることが明らかになっています。
ですから、冗談半分で葉っぱを摘み取ってしまうと、種の生存自体が危ぶまれてしまうのです。
カンボジア環境省は「植物の側で自撮りするだけなら問題はありません。ただ、植物に触ったり、摘み取ったりする行為は決してしないでください」と注意を呼びかけています。