4500年前に出現し、勢力を拡大していた
今回のプロジェクトは、シャーク湾の海草が遺伝的にどれほど多様であるかを理解する取り組みから始まりました。
海草に何種類の植物が生育しているかを知るには、その植物のDNAを調べる必要があります。
そこでチームは、シャーク湾全域から10カ所を選び、P. オーストラリスのサンプルを採取。全サンプルから合計1万8000の遺伝子マーカーを解析しました。
その結果、「すべてが同じ単一の種類である」という驚くべき事実が判明したのです。
つまり、180平方kmに広がるP. オーストラリスはすべて、地下でつながった1つの個体であり、世界最大の単一植物群と見られます。
180平方kmと言われてもどのくらいの範囲か、すぐにはピンときませんが、例えば山手線が囲む内側の面積が63平方kmだと言われています。
そのためこの植物は山手線が囲む土地の3倍近い範囲に広がっていることになります。
シャーク湾は、約8500年前、最終氷期の終わりに海面が上昇したことで誕生しました。
シャーク湾は、栄養分が少なく、海草のストレスとなる水中の光量が多いことで知られます。また、水温の変動が大きく(年によっては17〜30℃の幅がある)、塩分濃度も場所によって2倍ほど違います。
こうした厳しい環境にもかかわらず、P. オーストラリスは適応と繁栄に成功しました。
正確な年齢を特定するのは困難ですが、その規模や成長速度から、シャーク湾での出現時期は約4500年前と推定されています。
では、この厳しい環境で、P. オーストラリスはいかに増えていったのでしょう?