ウイルス感染でアセトフェノンが増加!感染拡大を助長していた
感染したマウスが発する匂いを化学的に分析した結果、20種類のガス状の化合物を検出。
そしてそれぞれを比較調査することで、そのうちの1つ「アセトフェノン」という匂い物質がより多くの蚊を誘引すると分かりました。
しかも感染したマウスは、感染していないマウスの10倍ものアセトフェノンを作り出していたのです。
では、ウイルス感染によりアセトフェノンが増加する明確なメカニズムとはなんなのでしょうか?
研究チームはこの点を調査し、アセトフェノン増加のメカニズムを明らかにしました。
アセトフェノンを作り出す細菌は、皮膚上で自然増殖する性質をもっていますが、通常は皮膚細胞から分泌される抗菌性タンパク質によって、その増殖は抑えられています。
しかしマウスがデング熱やジカ熱に感染すると、このタンパク質をつくる遺伝子の働きが弱くなると判明したのです。
結果としてアセトフェノンが増加し、より多くの蚊を引き寄せまうのです。
この一連のメカニズムは人間でも同様に確認されました。
ウイルスに感染した人間の汗にはアセトフェノンがより多く含まれており、その汗を付着させた綿棒にも、より多くの蚊が引き寄せられたのです。
つまり今回の発見をまとめると、デング熱やジカ熱のウイルスは、蚊媒介の感染を助長する特別なメカニズムをもっていた、ということになります。
これは蚊を上手く引き寄せることに成功したウイルス達が、より繁栄したという進化の結果と言えるでしょう。
一説には、世界でもっとも人類を殺している動物は蚊であると言われていて、多くの人たちは危険なウイルスを媒介する蚊を警戒しています。
しかし、このことをウイルス側も理解していて、自分たちの拡散戦略に利用しているというのは恐ろしい事実です。
この結果について、研究者たちは対抗処置がないかも検討しています。
追加の研究では、一般的な皮膚治療に用いられる「ビタミンA」が、感染したマウスのアセトフェノン量を減少させると判明しました。
そのため、もしかしたらビタミンAの投与によって感染拡大を抑制できる可能性があります。
チームは今後、デング熱が流行しているマレーシアで、ビタミンAを使った感染抑制実験を行う予定だといいます。