ストレスによって逆に「ぐっすり」睡眠できる仕組みが判明!
ストレスと睡眠には、古くから不思議な関係にあることが知られていました。
最も知られている例では、ストレスによる睡眠の妨害効果です。
持続的な強いストレスを受け続けた人間やマウスでは不眠症に陥ることが知られています。
しかしストレスと睡眠の関係は複雑であり、同様に慢性的なストレスを受けているマウスでも逆に睡眠が増加するケースも報告されています。
そのため睡眠はストレスによって単に妨害されるだけでなく、睡眠中にストレスに対抗する何らかの適応反応も起きていると予測されていました。
私たちヒトの場合でも、寝て起きるとストレスがサッパリ消えていたという経験をした人もいるでしょう。
しかし睡眠による回復効果が、いったいどんな仕組みで働いているかは長い間、謎に包まれていました。
そこで今回インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者たちは、ストレスを受けたマウスの脳内で何が起きているかを詳細に調べる実験を行いました。
調査にあたってはまず、マウスにストレスを与えるため、強いマウスに弱いマウスをイジメさせ「社会的敗北」を誘発させました。
社会的敗北状態になったマウスでは、人間のうつ病でみられるように、興味や好奇心が失われ、精神的にも不安なストレス状態に陥ります。
次に研究者たちは睡眠中のマウスのニューロンの活動を調べ、ストレスを受けたマウスとストレスを受けていないマウスとの違いを比較しました。
結果、ストレスを受けてた睡眠中のマウスの脳では5時間にわたり、中脳にある特殊なニューロン「VTAVgat-St」が活性化して、レム睡眠(浅い睡眠)とノンレム睡眠(深い睡眠)の両方を誘発していることが判明しました。
またこのニューロンが活性化すると、ストレスホルモンの分泌を制御する別のニューロンに信号が送られ、ストレスホルモンをそれ以上、放出しないように抑制していることが判明しました。
この結果は、新たに特定されたニューロン(VTAVgat-St)には「ストレスを検知」して「睡眠を促進」するとともに「ストレス自体を緩和」する機能があると予測されました。
ただ本当にこのニューロン(VTAVgat-St)がストレスを緩和しているどうかを調べるには、破壊してみなければなりません。