コロナ禍ではどんな人が家族問題を抱えやすい?
コロナ禍では、リモートワーク制度の導入や学校の一斉休校、施設への出入り制限などが行われました。
国によっては、都市や地域、国全体をロックダウンすることもあります。
これにより、私たちの生活は一変しました。
人々は家で過ごすことを余儀なくされ、2年経った今でもその影響は残っています。
家族単位でみると、以前よりも家族で過ごす時間が増えたことで、さまざまな家庭内の問題が目立つようになってきました。
例えば、児童虐待、インターネット依存の増加、介護問題、家庭内暴力や離婚、自殺率の増加などです。
しかし、「どんな人がこれらの問題を抱えやすいのか?」という「問題と要因の関連性」については詳しく明らかになっていません。
そこで若島氏ら研究チームは、2021年10月に、日本国内在住の子供をもつ親220名(平均年齢41.6歳)を対象にWeb調査を行い、それらのデータ分析によっていくつかの関連性を見出すことにしました。
分析の結果、下図のような関連性が見えてきました。
まず、未就学児がいる人ほど「虐待してしまうのではないか」と不安を感じる傾向が見られました。
また収入が減少した人ほど、精神的な健康が悪化しやすい傾向にあると分かりました。
ただこれらの点は、コロナ禍とは関連のない先行研究でも報告されているもので、コロナ禍特有のものではありません。
一方で、コロナ禍特有の傾向も明らかになりました。
例えば、喫煙者が配偶者から暴力を受けやすいという傾向が見られました。
ここからは、「喫煙がコロナの重症化リスク要因である」という情報から、夫婦間の葛藤や暴力につながっている可能性が示唆されます。
また、仕事をしている人ほどインターネット依存になりやすいという結果も、以前には見られなかった傾向です。
従来、インターネット依存は仕事をしていない人に見られる傾向でした。
しかしコロナ禍によるリモートワークの導入により、仕事をしている人でも1日中インターネットに触れることが増え、これが依存の増加につながっている可能性があります。
今回の結果は、直接的な因果関係を明らかにするものではありません。
それでもコロナ禍特有の家族問題に焦点を当て、家族支援を実施していくのに役立つでしょう。
私たちも、自覚がないまま、コロナ禍特有の家族問題を抱えていることがあります。
今回の結果に身に覚えのある人は、深刻な状況に陥る前に、家族で協力して対策を講じたり、誰かに相談したりできると良いですね。