サルは石製の「大人のオモチャ」を使って自慰をしている
これまでの研究により、ヒト以外にも、ウマ・シカ・パンダ・ヤマアラシ・セイウチ・コウモリ・鳥などのさまざまな種で自慰行為が確認されています。
高度な知能を有する動物たちにとって性は繁殖を行うためだけに植え付けられた本能ではなく、快楽を楽しむための手段にもなっているのです。
また2016年に行われた研究では、チンパンジーが果物のカケラを用いて自慰行為を行っている様子も確認されました。
2018年には下図のように、チンパンジーが人間の捨てたペットボトルを使って自慰行為をしている様子も確認されています。
これまでの研究によりチンパンジーには石をつかって木の実を砕いて中身を食べるなど、「食欲」のために道具を使用することが知られていましたが、「性欲」のためにも道具を使っていることが判明したのは大きな驚きでした。
そこでレスブリッジ大学の研究者たちは2022年に、インドネシアのバリ島に生息するカニクイザルたちを対象とし、道具を用いた自慰行為が他にも見られないかどうか調べることにしました。
すると驚いたことに、カニクイザルたちは石を用いた自慰を行っていることが判明したのです。
実際に観察された石での自慰行為がこちら。
オスの場合は上の動画のように、陰茎に1つまたは複数の石をリズミカルに擦りつけたり、ジャラジャラと叩きつけるようにして刺激を与えていました。
一方で、オスのように性器が外に露出していないメスでは自慰行為の仕方も違います。
では、メスの方を見てみましょう。こちらです。
メスの場合はこの動画のように、下腹部の下に石を配置して女性器を擦り付けていました。
またカニクイザルたちが自慰に使用している石を調べたところ、メスが使用する石はオスにに比べて、より表面が荒く、より角ばった石を使用することが判明します。
さらにカニクイザルたちが遊びで使う石などと比較を行ったところ、オス・メスともに自慰に使う石は、数・大きさ・表面の粗さなどの変動幅が少なく、一定の数値に収束する傾向があることがわかりました。
この結果は、カニクイザルが自慰に使う石は、遊びに使う雑多な石に比べて「厳選」が行われ、特定の(好みの)形状のものが多用されていることを示します。
しかしカニクイザルは研究対象として比較的メジャーな動物であるのに、なぜこれまで石を使った自慰が報告されていなかったのでしょうか?