ガムを噛むのはダイエットに効果的?
ヘンリー氏ら研究チームは、人類の顔の構造や食事、咀嚼の変化に対する理解を深めるため、咀嚼に費やされる1日のエネルギーを定量化するための実験を行いました。
今回の実験には、18~48歳までの女性15人と男性6人が参加。
参加者たちは、写真のように密閉されたフードをかぶり、2種類(ソフト・ハード)の甘くないガムを噛みます。
そして彼らがガムを噛んでいる間、酸素消費量や二酸化炭素生成量、咀嚼するための筋肉活動が計測され、そこからどれだけエネルギーを消費したか算出されました。
その結果、参加者たちはソフトガムを噛むと、平均して基礎代謝量(BMR)の10.2%のエネルギーを余分に消費しました。
また、ハードガムを噛んだ場合のエネルギー消費量は、15.2%に増加したようです。
基礎代謝量とは、心臓を動かす、呼吸をする、などの生命維持に必要な最低限のエネルギー量のことです。
つまり、ガムを噛んでいる間は、ただ安静にしているときよりも、10~15%分のエネルギーを余分に消費できるのです。
ヘンリー氏は、この結果について「食べ物を咀嚼することは、多くのエネルギーを消費すると分かりました。しかも食べ物が硬ければ硬いほど、より多くのエネルギーを消費するのです」と述べました。
彼らは、昔の食物が現在よりもはるかに硬く、咀嚼に時間がかかっていたことにも注目しており、「消費エネルギーを抑えるよう人類の咀嚼システムが最適化されてきた」と考えています。
ではこの情報は、「運動嫌いのダイエッター」にとって朗報なのでしょうか?
成人男性の基礎代謝量は1日約1500kcalとなっています。
1日中ガムを噛み続けると、1500kcal×15%=225 kcalとなり、約200 kcalを余分に消費できることになります。
とはいえ、現実には1日の半分もガムを噛み続けることはできないでしょう。
そう考えると、どう頑張ってもガムを噛むことで消費できるエネルギーは100 kcal未満になります。
そして14粒入りのキシリトールガムが約40 kcal、9枚入りの板ガムが約80kcalなので、ノンシュガーのガムを選択しない限り、あまり効率的とは言えません。
つまり、今回の報告はただガムを噛む「だけ」で痩せられるというほどうまい話ではないようです。
それでも咀嚼が私たちの予想以上に多くのエネルギーを消費するのは事実です。
座りっぱなしでろくな運動をしていないという人や、ダイエット中の空腹を紛らわしたいという人は、ガムを噛む習慣が少しは役立つかもしれません。