脳インプラントによる電気刺激で人間の過食を抑えることに成功
今回チームは、ヒトに対して前回と同じ方法・装置を用いました。
重度肥満の過食性障害(BED)患者2人に脳インプラントを埋め込み、6カ月の間、側坐核の活動を記録したのです。
患者たちは自宅で日常生活を送り、過食したときの様子・時間を自己申告しました。
また時折、実験室でファーストフードやキャンディーなど、自分の好きな食べ物をビュッフェ形式で食べてもらい、その様子を撮影。
その結果、先行研究と同様、過食してしまう数秒前に患者の側坐核に特徴的な低周波信号が発生すると判明しました。
次にチームは、過食に関係する低周波信号が発生するたびに、脳インプラントが自動的に作動し、刺激を与えるようにしました。
脳インプラントで高周波の電気刺激を与え、過食の低周波信号に対処したのです。
その結果、患者たちは6カ月の間に過食の頻度が急激に減少し、「制御できないほどの食欲」もかなり少なくなりました。
体重も約5kg以上減少したとのこと。
1人の被験者においては、もはや過食症とは言えないレベルにまで症状が改善したようです。
研究チームは、「重大な副作用はなかった」と主張しています。
しかし、今回の研究に参加していないイギリス・ヨーク大学(University of York)に所属する精神衛生学者アレクサンドラ・パイク氏は、この研究を「将来有望」としつつも、次のように懸念しています。
「現在の装置は、実際の食事体験以外でも、患者の脳に1日何百回と刺激を送っています。
つまり、検出された脳活動のパターンは、患者が過食している時以外にも、患者が起きている時間帯の50~60%の頻度で発生していると考えられます。
現在の設定では、おそらく必要以上に脳に刺激を与えてしまっています」
過食を抑えることができたのは事実ですが、より多くの検証と調整が必要なのかもしれませんね。
ハルパーン氏ら研究チームは現在、さらに6カ月間の実験を続けており、将来の大規模実験を行うための準備を進めています。