農業やエネルギー産業に大ダメージ!
干ばつにより最も深刻な影響を受けたのは「農業部門」です。
とくに、夏作物は大きな被害を受け、2022年のトウモロコシ収量は、過去5年間の平均を16%も下回る結果になりました。
大豆とヒマワリの収量も、それぞれ15%と12%減少すると見られています。
それと並行して、「畜産部門」も多大な被害を受けました。
夏場のフランスでは例年、多くの農場で牛の放牧を行うのですが、今年は牧草が育たないため、冬用に備蓄していた干し草を使用せざるを得なくなっています。
加えて、生産コストを抑えるために、飼育する家畜の数を減らしており、中には、家畜の売却を迫られる事業者も多いとのことです。
さらに、干ばつの影響は「エネルギー部門」にまで及んでいます。
たとえば、イタリア北部やポルトガルでは、水力発電用の貯水量が例年の半分以下にまで落ち込んでいます。
それから、フランス南西部では、原子力発電所の冷却水として使われているガロンヌ川の水温が高くなりすぎているため、同地域にある原発の出力を落とすことになったのです。
さらに、ライン川の水位が低くなったことで、内陸の海運に支障が出ており、仕方なく船舶の積載量を減らした結果、石炭や石油の輸送に損害が出ています。
そして何より、今夏のヨーロッパでは山火事の被害が甚大であり、2007年以降で最も高い「温室効果ガスの放出量」を記録しました。
とくに、フランスとスペインでは規模の大きな山火事が発生しており、温室効果ガスの放出量が過去20年間で最大となっています。
山火事の専門家で、コペルニクス大気監視サービス(CAMS)のマーク・パリントン(Mark Parrington)氏は「ヨーロッパ南西部の大規模な山火事が、ここ15年間のヨーロッパで最大の排気量をもたらしたことは、今夏を通じて最も気がかりなことでした」と述べています。
しかし、干ばつや山火事はヨーロッパだけの問題ではありません。