陰謀論は別の陰謀論を根拠に「証拠の循環」を行っていると判明!
「世界は悪意ある秘密結社による支配を受けており、世の中で起こるあらゆる大惨事は、秘密結社のたくらみに大本がある」
陰謀論のこうした主張は古くから人類の興味を引き立て、現在に至るまで多くの人々に支持されています。
以前に行われた研究によれば、アメリカ人の成人の半数が、なんらかの医学関連の陰謀論を信じていることが報告されています。
また以前から、ある陰謀論を信じる人間は、別の陰謀論も信じる傾向が強いという不思議な現象が知られていました。
そこで今回、ヌーシャテル大学の研究者たちは、約2万4000件の陰謀論にかかわる記事と7万3000件の非陰謀論の記事のテキストデータを分析することで、陰謀論が持つ特性をあぶり出すことにしました。
これまで陰謀論についてさまざまな研究が行われてきましたが、今回は規模において最大のものとなっています。
結果、非常に興味深い事実が判明します。
通常のニュースは科学論文などの大元となる情報源を元に、トピックごとにまとまりのある(ある意味ピラミッド型の)話の展開が行われています。
たとえば、ある抗がん剤の効果のニュースでは、抗がん剤を開発した企業の発表、抗がん剤の原理を発見した研究論文……といったように、抗がん剤という単一トピックについて情報の階層が形成されています。
一方、陰謀論が根拠として提示するものの多くは別の陰謀論であり、陰謀論同士で「証拠の循環」が起きていることが判明します。
また内容においても陰謀論は非陰謀論に比べて多彩なトピックが強く結びついていることが判明します。
たとえば、ある新型コロナウイルスのワクチン陰謀論では「黒幕はビルゲイツであり、資金面でバックアップしているのがウォール街の投資家たち、そして5G技術がワクチンの隠された機能をオンにして、人類を不妊にする」といったように、本来は医療系の話であるにもかかわらず、企業家のビルゲイツ・金融業界の投資家・IT分野の5G技術・生物学分野の不妊など、多彩なトピックが驚くべき飛躍によって合成されていました。
これらの結果から研究者たちは、陰謀論はさまざまなトピックの情報を組み合わせることで主張を合成あるいは錬成し、陰謀論同士で「証拠の循環」を行ってお互いを補強し合い、巨大な陰謀論の世界観を構築していると結論しました。
しかし数ある陰謀論のなかには、お互いの主張が矛盾するものが存在します。
巨大な陰謀論の世界では、対立する陰謀論たちはどのように共存しているのでしょうか?