サッカーボールの物理学
「シュート」「フリーキック」「ロングパス」などは、試合を大きく左右します。
そのため、ボールが空中をどのように動くかは、選手やサポーターにとって非常に重要です。
サッカーボールの動きに影響を与える要素の1つに、流体力学における「層流と乱流」があります。
層流とは「規則正しい流れ」であり、乱流とは「不規則に乱れ、混ざり合っている流れ」です。
身近な例としては、水道の蛇口から出る水が挙げられます。
蛇口を小さく開けると水が規則正しく流れ(層流)、大きく開けると大量の水が乱れて流れ(乱流)るのです。
同じように、サッカーボールが空中を高速で移動するときには乱流を、低速で移動するときには層流を生じさせます。
蹴られたボールは徐々に減速するので、あるタイミングで乱流から層流に切り替わります。
そして層流がボールに与える抗力係数は乱流の2.5倍大きいので、乱流から層流に移行するときにボールのスピードは急激に落ちることになります。
つまり、乱流から層流に移行するタイミングをコントロールすることで、ボールの動きに大きな影響を与えられるのです。
では、どのようにコントロールできるのでしょうか?
ポイントは、ボールの表面を覆う薄い空気の層です。
ボールが空中を高速で移動すると空気の層に覆われますが、この空気の層が徐々にはがれて、ボールの後方で乱流を作っています。
そしてボールの表面を粗くすると、ボールを覆う空気の層がゆっくりと剥がれ落ちるため、乱流の時間が長くなり、減速しにくい「伸びのある」球筋になります。
これを実践しているのがゴルフボールであり、その表面に多数のくぼみがあるのは、滑らかな表面のボールよりも遠くに飛ばせるからです。
では、ワールドカップ公式サッカーボールでは、これらの特性がどのように考慮されてきたのでしょうか?