アンキロサウルスのハンマーは捕食者用ではなかった?
尻尾に武器をもつ恐竜は、その武器を敵を攻撃するために使っていたと考えられています。
こうしたイメージは、映画「ロスト・ワールド」のステゴサウルスのシーンや、ゲーム「モンスターハンター」に登場する架空の恐竜などに反映されていますね。
そして古生物学者たちは、尻尾にハンマーをもつアンキロサウルスが、捕食者から身を守るためにこの武器を使用したと考えてきました。
この考えは、鎧竜類(曲竜類)アンキロサウルス科の一種である「ズール・クルリヴァスタトル(Zuul crurivastator)」にも当てはまります。
この恐竜の属名「ズール」は、映画「ゴーストバスターズ」のキャラクターにちなんでおり、小種名「クルリヴァスタトル」は、ラテン語の「crus(すね)」と「vastator(破壊者)」から来ています。
名前が示す通り、「アンキロサウルス科のズールは、捕食者であるティラノサウルスなどのすねを尻尾のハンマーで攻撃していた」というのです。
ところが、この名前が付けられたのはズールの頭蓋骨と尻尾のみ発掘された段階であり、不完全な情報によるある意味「偏った命名」だった可能性があります。
では、ズールを含むアンキロサウルスは、本当に捕食者を攻撃する「すねの破壊者」だったのでしょうか?
アーバー氏ら研究チームは、アンキロサウルスの胴体を含む化石標本を分析することで、新たな可能性を見出しました。