サンタクロースの墓
これまでの研究により、聖ニコラウスの遺体はトルコのアンタルヤ県の「聖ニコラウス教会」に存在していると考えられてきました。
しかし現在の教会はオリジナルではありません。
中世に起きた地中海の海面上昇によって、聖ニコラウスの遺体を収めていた古代教会は水没してしまい、現在の教会はその上に520年ごろに建てられたからです。
そしてさらに残念なことに、聖ニコラウスの遺骨は11世紀のイタリアの商人によって盗掘の被害を受けていました。
聖ニコラウス教会の床下に古代教会が存在することは古くから知られていたため、盗掘団は聖ニコラウスの遺骨を盗み出すために教会の床を掘り返し、聖ニコラウスの遺体を持ち去ってしまったのです。
ですが教会から考古学的な価値が失われたわけではありません。
2017年には現在の教会の「床下」を調査するプロジェクトが開始され、美しいモザイク柄の古代教会の土台が発見されました。
そして今回、遂に聖ニコラウスの棺が安置されていた場所の特定にも成功します。
聖ニコラウスの棺は11世紀の盗掘によって元々の位置から動かされてしまい、古代教会のどこに置かれていたかはわからなくなっていました。
ですが発掘チームは現在の教会に聖墳墓教会と同様の、頂点部分が開いた構造があることに気付きます。
エルサレムの聖墳墓教会はイエス・キリストが埋葬されている場所とされており、イエスの昇天の物語を描くために、ドーム状の天井の一部が開けられています。
また現代の教会の壁にはイエスが聖書を左手に持つフレスコ画が描かれており、近くの床には「恵として」を意味するギリシャ文字が刻まれていました。
そしてドームの頂上から差し込まれる日の光、フレスコ画に描かれたイエスが指し示す位置、そして床に刻まれたギリシャ文字の位置が一致していることが判明します。
この結果から発掘チームは、聖ニコラウスの棺はこの3つの要素が重なる位置に違いないと結論しました。
発掘チームの見解が科学的に正しいかどうかはまだ検証の余地があるのは確かです。
しかし歴史や教会の構造から謎を解明していく過程は歴史ミステリー小説のようで非常に興味深いものと言えるでしょう。