ウイルスも食物連鎖の生態系に組み込まれている
生物の教科書には上の図のように、植物・動物・微生物たちによって構成される生態系の図がよく描かれています。
しかしこれら生態系を描いた図の中に、ウイルスが組み込まれたものは存在しません。
ウイルスは感染を起こすことで生命に脅威を与えることはあっても、生態系の食物連鎖に組み込まれるとは考えられていなかったからです。
しかし今回の研究によって、世界中に普遍的に存在するありふれた動物プランクトンがウイルスだけを食べて増殖できることが明らかになりました。
この事実は、ウイルスが食物連鎖に組み込まれた生態系の一部であり、地球の炭素循環に大きな影響を与えている可能性を示唆します。
実験で使われたクロロウイルスは植物プランクトンに感染すると、最後にはプランクトンを破裂させて周囲にウイルス粒子を飛び散らせます。
この過程において、植物プランクトンが内部に保持していた炭素をはじめとした分子が、一時的に生物の体から環境へフィードバックされることになります。
しかハルテリアが存在する場合、この過程を引き起こすウイルスを食べるため、環境への栄養素の放出が抑えられることにつながります。
デロング氏らは「ウイルスの数やハルテリアの数を考慮すると、彼らが食物連鎖の中で担うエネルギー量は莫大で、地球規模の炭素循環にかんする既存の見方を変えることになるはずだ」と述べています。
研究者たちは今後、ウイルスを食べるハルテリアのような存在が、地球の生態系や炭素循環に与える影響を具体的に調べていくとのこと。
もしかしたら近い将来、教科書に描かれる生態系の図に「ウイルス」の存在がこっそり付け加えられているかもしれませんね。