山中因子を投与されたマウスは平均余命が2倍になる
若返りによって寿命も延長されるのか?
「Rejuvenate Bio」社が行った2つ目の研究では、山中因子を使った寿命延長効果が検証されました。
調査にあたってはまず124週齢(2.4歳)の老齢マウスが用意され、1つ目の研究と同じく山中因子のうちのOct4、Sox2、Klf4の3つが無害なウイルスを使って投与されました。
マウスの平均寿命は2.5年ほどであるため、実験に使われたマウスたちはほぼ平均寿命に達していると言えるでしょう。
研究では山中因子がこの老齢マウスたちの残りの寿命を延長する効果があるかどうかが測定されました。
結果、対象群となったマウスたちの平均余命が9週間であったのに対し、山中因子を投与されたマウスたちの平均余命は18週間と約2倍に延長されていることが判明します。
またDNAの化学的修飾パターンを調べたところ、大きく変化していることも判明しました。
これまでの研究により、山中因子ががんを促進するという報告がいくつか得られています。
しかし同社が行った研究では、山中因子を与えられたマウスたちに明らかな悪影響はみられませんでした。
現在、ハーバード大学およびRejuvenate Bio社の研究チームはどちらも、臨床に向けた研究を進めているようです。
1つ目の研究を主導したハーバード大学のシンクレア氏は、老化を逆転させることができれば、心血管疾患・2型糖尿病・アルツハイマー病などの諸症状を同時に排除することが可能であると述べています。
シンクレア氏によれば、これら諸症状は現在別々の薬によって治療されているものの、どれも本質は老化症状が現れたものであるため、若返りを可能にする薬が開発されれば同時治療が可能になるとのこと。
もし近い将来、薬局で「若さ」を処方できるようになれば、人類の健康は大きく改善するでしょう。