主な用途は「獲物のピン留め」だった?
アカノガンモドキは熱帯の草原に暮らす地上性の鳥類で、翼はありますが空はほとんど飛びません。
全長は76〜90センチ程で、ヘビやネズミなどの小動物を捕食します。
警戒心が強く見慣れないものには大声を立てるため、現地ではニワトリ小屋の番犬代わりに使われることもあるそうです。
そして、アカノガンモドキは第2指が大きく発達した鉤爪を持っており、ドロマエオサウルス科のそれと形状がよく似ていることが指摘されていました。
さらに現生鳥類はドロマエオサウルス科を含む獣脚類の子孫であるため、今は亡き恐竜たちの行動を理解する上で大きなヒントとなります。
そこでチームは、アリゾナ州のワイルドライフワールド動物園で飼育されている「エリー(Ellie)」と、ユタ州のトレイシー・エヴィアリー動物園で飼育されている「アーニー(Ernie)」という2羽のアカノガンモドキを調査対象としました。
エリーに対する実験では、ゴム製のヘビや鉄の大型キーホルダーを与えて、どのように反応するかを観察。
その結果、エリーは獲物と認識したヘビを嘴で持ち上げて岩に叩きつけた後、鉤爪で地面に”ピン留め”して、嘴でヘビを引き裂き始めたのです。
また見慣れないキーホルダーに対しても同様の行動を取りました。
鉤爪でピン留めしたキーホルダーを嘴で上に引っ張り、引き裂くような行動を見せています。
さらにアーニーには餌用の死んだマウスを与えてみると、同じように鉤爪でピン留めしたマウスを嘴で上に引っ張り、肉を引き裂いて食べ始めたのです。
研究主任のブライアン・カーティス(Brian Curtice)氏は、この結果を受けて「ドロマエオサウルス科の鉤爪も攻撃を主要な用途とはせず、獲物のピン留めに使っていた可能性がある」と指摘しました。
ドロマエオサウルス科の鉤爪はアカノガンモドキよりもはるかに大きく厚みがあったため、より大きな獲物をピン留めするのに役立ったと考えられます。
ただし、ドロマエオサウルス科とアカノガンモドキの鉤爪は構造がまったく同じわけではないので、恐竜独自の使い方もあったはずです。
その中には、少なからず攻撃に用いる方法も存在したでしょう。
チームはこの問題をさらに掘り進めるべく、恐竜の骨化石をもとに手足の動きを再現できるデジタル3Dモデルを作成し、より詳細な解剖学的研究を行う予定です。
キーホルダーを鉤爪でピン留めする様子。
ゴム製のヘビを嘴で持ち上げ、岩に叩きつける様子。