ポリフェノールとタンパク質のタッグで「抗炎症作用」が2倍に!
私たちの免疫システムは、体内に細菌やウイルスなどの異物が侵入することで起動します。
こうした異物を攻撃し排除するプロセスで生じるのが「炎症」です。
炎症が起きると患部に腫れや発熱、疼痛(とうつう)などが生じますが、健康を取り戻す中で炎症も次第に治っていきます。
ただし炎症が体内で慢性化すると、生活習慣病や老化が促進されるため注意が必要です。
この炎症を鎮める作用のことを「抗炎症作用」といい、抗炎症作用を持つ化学物質は食事から摂取できます。
代表的な物質が「ポリフェノール」で、抗炎症性や抗酸化性を持ち、体内の酸化ストレスを軽減して炎症を予防してくれます。
具体的な食材としては、野菜や果物、コーヒー豆、お茶、ワイン、ビールなどにポリフェノールが豊富です。
一方で、ポリフェノールについてはまだ多くのことが分かっていません。
というのも、ポリフェノールは高い反応性を持つ不安定な物質であるため、他の化学物質と結合することでどんな機能を生み出すか分かっていないからです。
そこで研究チームは今回、ポリフェノールとタンパク質の構成要素であるアミノ酸を結合させたものが、免疫細胞に対してどのようなプラスの効果を示すかを新たに調査しました。
(過去の研究によると、ポリフェノールの一種であるカフェ酸とアミノ酸の一種であるシステインを結合させると、抗酸化性が増大することが分かっています)
実験では、人工的に炎症を起こしたマウスの免疫細胞を用意。
これを3つのグループに分け、一つはポリフェノールとアミノ酸を結合させたものを添加、もう一つは同じ量のポリフェノールだけを添加、そして対照群には何も添加しませんでした。
その結果、ポリフェノールとアミノ酸のペアを添加した免疫細胞は、ポリフェノールだけを添加した細胞に比べて、抗炎症作用が2倍に高まっていることが判明したのです。
つまり、ポリフェノールとタンパク質の組み合わせにより、免疫細胞の抗炎症性が倍増すると考えられます。
では、実際にどのような食材の組み合わせであれば、これと同じ抗炎症作用が得られるのでしょうか?
(ただ単純にポリフェノールとタンパク質を含む食材を食べても、2つの分子が結合するとは限らないため、実験で見られた抗炎症作用の倍増を必ず起こすことはできません)
同チームが参加した先行研究(Food Chemistry, 2022)では、ポリフェノールを多分に含むコーヒーにタンパク質の豊富な牛乳を混ぜることで、ポリフェノールとタンパク質中のアミノ酸の分子同士が結合することが実証されています。
つまり、コーヒー牛乳は先の実験と同じく、免疫細胞の抗炎症作用を倍増させる可能性があるのです。
当然、他にも同様の作用が期待できる食材の組み合わせはあるでしょう。
研究主任のマリアンヌ・ニッセン・ルンド(Marianne Nissen Lund)氏は「たとえば、肉料理と野菜の組み合わせや、牛乳やヨーグルトを加えたスムージーでも同じようなことが起こるのではないか」と話します。
ただし、この抗炎症作用は細胞実験で検証されたばかりであり、実際にコーヒー牛乳を飲むことで人体に同じ効果が得られるかどうかはまだテストされていません。
ルンド氏は「それを証明するため、今後はまず動物を使った試験を進めていき、効果が確認され次第、人体でのテストを行う予定です」と述べています。