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心拍数が大きく異なる生物は時間の感じ方も異なる
「ゾウが感じる時間とネズミが感じる時間は異なる」という話を耳にしたことがあるかもしれません。
生物学者である本川達雄氏の著書『ゾウの時間ネズミの時間』では、動物はサイズ(体重)によって寿命が異なり、時間の感じ方も異なると解説されています。
そして体重と関係しているのが、心周期(収縮と弛緩からなる1回の心拍動にかかる時間)です。
ゾウの心周期は3秒、ヒトでおよそ1秒、普通のネズミなどは0.2秒であり、こうした心拍の違いが時間の感じ方にも影響を与えているというのです。
そのためゾウにとっては一瞬の出来事でも、ネズミにとってはもっと長く感じるのです。
同様に、昔から科学者たちは、「心臓は、脳が時間の経過を感じる上で重要な役割を担っている」と考えてきました。
では、同じ人間でも心拍数の変化によって、時間の感じ方は異なるのでしょうか?
サデギ氏ら研究チームは、この点を明らかにするため、「1秒未満のごく短い時間」の感じ方を調査することにしました。
なぜ「ごく短い時間」でテストするのでしょうか?
時間の感じ方を調べるテストでは、通常、もっと「長い時間」の知覚が対象になります。
例えば「1分をどう感じるか」「1時間の感じ方の違い」などの方が分かりやすいように感じますね。
しかしこれらの条件だと、時間の感じ方に影響を与える他の要因(感情や思考)が入ってくる可能性があります。
例えば、同じ時間でも、仕事をしている時間と遊びに出かけている時間では流れ方がまるで異なるように感じます。
これは実験を行う場合も同様であり、時間の感じ方には、その人の時間に対する精神状態がどうしても反映されてしまうのです。
そのためチームは、こうした様々な要素を排除し、心拍という生理的なリズムだけで感覚が変化するのか調べるために、感情や思考が入る隙間のない「1秒未満のごく短い時間」でテストすることにしたのです。