100人に1人の割合で糖尿病は「寛解」していた!
対象者は現在も通院中で、データ登録時に寛解の状態ではなく、血糖の指標であるHbA1c値(※)や体重が継続的に測定されている18歳以上の男女となっています。
(※ HbA1cは、赤血球中のヘモグロビンのうち、どれくらいの割合が糖と結合しているかを示す検査値のこと)
全体の調査期間は1989年から2022年にわたり、その間に症状が寛解したか(具体的には薬物治療が中止され、正常な血糖値が3カ月以上続いたか)を追跡しました。
さらに「寛解」した人のうち、どのような人が長期間にわたり「寛解」状態を維持できたかも調べています。
分析の結果、追跡期間(平均5.3年)の間に3677人が寛解に至り、その頻度は1000人を1年追跡すると10.5人(約1%)となりました。
これは糖尿病患者全体のおよそ100人に1人の割合です。
また追跡開始時の患者さんの特徴を考慮したところ、
①男性
②40歳未満
③糖尿病と診断されてから1年未満
④HbA1c値が低い
⑤肥満度(BMI)が高い
⑥1年間の減量幅が5%以上
⑦薬物療法を受けていない人
において寛解の割合が高くなっていることが判明しました。
その中でも、1000人/年あたりの寛解発生数は、薬物療法を受けていない人で21.7人、HbA1c値が低い人で27.8 人、1年間の減量幅が5%以上の人で25.0 人、1年間の減量幅が10%以上の人で48.2人と高くなっています。
特に1年間の体重変化については、BMIが0〜4.9%低下した場合を基準とすると、寛解の発生率はBMI5.0〜9.9%低下で2.2 倍、BMI10%以上の低下で4.7倍上昇とかなり高くなっていたのです。
BMIとは身長と体重の比率から肥満度を計算した体格指数のことで、体重(kg) ÷ 身長(m)2という式で計算されます。
この結果を見るとBMIを低い値へ改善させることは、糖尿病の寛解とかなり密接な関係があるようです。
反対に、体重が増加すると寛解が発生しにくくなる傾向も確認できました。
どんな人は糖尿病を「再発」しやすいのか?
さらに糖尿病が寛解した3677人を追跡すると、1年間寛解を維持した人は1187人にとどまり、3分の2にあたる2490人が再発(血糖値の再上昇)しています。
再発した患者さんの追跡開始時の特徴を分析すると、糖尿病と診断されてからの期間が長いこと、BMIが低いところから体重が増加した人において再発が起こりやすい傾向が見つかりました。
糖尿病の寛解とその継続には「早期の発見」と「体重管理」が重要なようです。
従来の医学では、日本人を含む東アジア人は欧米人に比べてインスリンを分泌する力が元から弱く、糖尿病の寛解は難しいのではないかと考えられてきました。
しかし本研究により、100人に1人の割合で寛解している実態が明らかになったことは驚くべき結果です。
この事実に医師や患者さんが意識的になり、「糖尿病は寛解できる」ものとして治療に励めば、その割合はもっと増えることが期待できます。
さらに寛解後も体重管理や適切な生活習慣を継続できれば、自分が糖尿病であったことすら忘れてしまう日々が訪れるかもしれません。