脳インプラントのプロトタイプ
脳インプラントのプロトタイプ / Credit:Neuralink
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イーロン・マスクのニューラリンク、BCI開発でFDAがヒト臨床試験を承認

2023.06.02 Friday

アメリカの実業家イーロン・マスク氏の脳デバイス開発企業「ニューラリンク(Neuralink)」は、以前から脳活動を解読してコンピュータに接続する「ブレイン・コンピュータ・インターフェース(BCI)」の開発を続けてきました。

そして2023年5月25日、彼らにとってマイルストーンとなる発表がなされました。

なんと、アメリカ食品医薬品局(FDA)から、開発を進めるBCI技術のヒト臨床試験開始の承認を得たのです。

近いうちに、脳とコンピュータを繋げるための人体実験が開始されるでしょう。

elon musk’s neuralink receives FDA approval to implant & test brain-reading device in people https://www.designboom.com/technology/elon-musk-neuralink-fda-approval-implant-test-people-05-29-2023/ The FDA finally approved Elon Musk’s Neuralink chip for human trials. Have all the concerns been addressed? https://theconversation.com/the-fda-finally-approved-elon-musks-neuralink-chip-for-human-trials-have-all-the-concerns-been-addressed-206610

ニューラリンクのヒト臨床試験をFDAが承認

ブレイン・コンピュータインターフェースBCI:Brain-computer Interface)とは、その名の通り、とコンピュータを繋ぐ装置のことです。

「手を使わなくても念じるだけでゲームをプレイする」など、脳活動を利用してコンピュータを操作するためのデバイスを指します。

ニューラリンク社は、これまで脳に埋め込むタイプのBCIの開発に取り組んできました。

脳内チップを装着したサルが「思考」だけでゲームする様子を公開

2021年には、ワイヤレス脳インプラント「N1 Link」が埋め込まれたサルによるデモンストレーションが公開されています。

動画では、サルが思考だけでピンポンゲームを行っている様子が映し出されました。

この時点で、動物が思考だけでコンピュータを操作することに成功していたのです。

現在、ニューラリンク社のWebサイトでは開発中のBCIが「N1 Implant」と名付けられています。

この円盤型の脳インプラントには、脳活動を読み取る細い電極(髪の毛の直径の約4分の1)が1024本あり、人間の耳の後ろあたりに埋め込まれます。

ニューラリンク社のBCI「N1 Implant」
ニューラリンク社のBCI「N1 Implant」 / Credit:Neuralink

また小型のバッテリーとワイヤレス充電機能も内蔵されているようです。

そして2023年5月25日、ニューラリンク社はアメリカ食品医薬品局(FDA)からヒト臨床試験開始の承認を取得したと発表しました。

マスク氏によると、ヒト臨床試験の許可を得るための試みは2021年から始まっていたようであり、今回の発表は2年以上の粘り強い働きかけの結果だと言えます。

ちなみに2022年12月には、ニューラリンク社が動物福祉違反の疑いでアメリカ合衆国農総省の調査を受けていると報じられていました。

「マスク氏が成果を急ぐあまり、多くの動物が犠牲になっている」と、内部スタッフから告発があったようです。

FDAの基準をクリアし、ヒト臨床試験の承認がおりる
FDAの基準をクリアし、ヒト臨床試験の承認がおりる / Credit:Neuralink

また以前からニューラリンク社のBCIには、ヒト臨床試験を開始するためにクリアすべき多くの課題があると考えられてきました。

例えば、BCIを脳に埋め込んだり取り外したりする際に、被験者の脳を損傷や感染、出血、炎症から保護できるという証拠を提示しなければいけませんでした。

埋め込んだBCIによって意図しない副作用(脳機能の低下、頭痛、気分障害、認知障害など)が起きてもいけません。

さらにバッテリーの熱で被験者の脳が焼かれないよう設計することも大切です。

加えてBCIで収集した脳波データがハッキングなどにより悪用されるのを防ぐためにも、強力なセキュリティとプライバシーの保証がなければいけません。

近い将来、四肢麻痺の患者が思考だけでコンピュータを操作できるようになるかも
近い将来、四肢麻痺の患者が思考だけでコンピュータを操作できるようになるかも / Credit:Neuralink

こうした課題点が完全に解決されたわけではないかもしれませんが、FDAの厳格な承認プロセスを考慮すると、今回の承認の発表は、それぞれの要素が少なくとも一定のレベルに到達したと推測できます。

ニューラリンク社の2023年5月26日のツイートによると、臨床試験の募集はまだ始まっておらず、詳細は近日中に発表されるようです。

ニューラリンク社は「現在、四肢麻痺の患者が思考でコンピュータやモバイル機器を操作する」ことに重点を置いており、ヒト臨床試験によって、この技術の実現はますます近づくでしょう。

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