寒さがサルの協力関係を作り出し、母子の絆を強めるホルモンを強化していた
研究チームが高地などの寒冷な地域に生息するコロブス亜科のグループを調べた結果、それらのサルたちは、より大きく複雑な社会を形成する傾向があると分かりました。
生息地が与える影響についてガーバー氏は、次のように説明しています。
「熱帯地域では食物を入手しやすいため、縄張り意識を持つ余裕があり、縄張りで制限された狭い区域でも生きていくことができます。
しかし、高地などの寒冷地域での生活は困難です」
例えばウンナンシシバナザル(学名:Rhinopithecus bieti)は、中国の標高4100mに生息しており、夜には気温が氷点下になります。
そのような厳しい環境で生き残るためには、ハーレム間の連携を強化し、互いに協力しなければいけないのです。
貴重な食料を集めるための広範囲の縄張りを天敵から守るためにも、このような社会的絆が必要だったのでしょう。
また研究チームは、寒冷地域に住むコロブス亜科のサルにおいて、寒冷ストレスに関係するエネルギー代謝の遺伝子が変化したのを発見しました。
加えて、母親の行動や社会的関係に関与するホルモン(ドーパミンとオキシトシン)を強化する遺伝子変化も見られました。
これにより母ザルが赤ちゃんザルを世話する時間や授乳期間が長くなり、乳児の生存期間が全体的に延びると考えられます。
厳しい寒さが、ハーレムのボスであるオスを寛容にし、個々の協力関係を高め、母子の絆を強めていたのです。
今後研究チームは、交尾や社会的行動の変化についても、同様の遺伝子変化が関係しているか研究したいと考えています。