「餌の取り合い」が起きない理由が説明できる?
ゾウにまつわる長年の謎とは、つまり「資源が限られた環境下で、どうして餌の取り合いが起きないのか」ということです。
ゾウの家族はいつも仲睦まじく食事をしていますが、もし皆んなが同じものを食べるのであれば、餌をめぐる仁義なき争いが勃発してもおかしくありません。
しかしそうならないのは「ゾウが入手可能な餌だけでなく、個々の好みや生理学的な状態にもとづいて別々の食事をしているからだ」とカーツィネル氏は指摘しました。
先に示したように、大人のゾウは癖が強かったり、硬いものをよく食べ、子ゾウたちは柔らかく食べやすい植物をよく食べている可能性があります。
他の一例として、カーツィネル氏は「妊娠中のゾウであれば、時期や体調に応じて食欲や食べるものが他のメンバーと大きく異なる」と述べています。
家族内でも毎日の食べ物を変えることが、餌の取り合いを防ぎ、仲良く食事をする秘訣だったのかもしれません。
また今回の知見は、絶滅が危惧される野生ゾウたちの保護活動にも役立つと考えられます。
ゾウの繁殖を促進し、個体数を安定して増加させるには、餌となる植物の多様性にも気を配る必要があるのです。
「それぞれのゾウは日々の食習慣において、バラエティやちょっとしたスパイスを必要としているのでしょう」とカーツィネル氏は話しました。