ADHDの人は政治に参加する可能性が高い!
注意欠陥/多動性障害 (ADHD) は、注意不足、多動性、衝動性を特徴とする精神疾患の一種であり、成人人口の1~7.3%が相当するメジャーな症状です。
ADHDの原因は主に前頭葉の発達の遅れによって、ドーパミンやノルアドレナリンなどの重要な神経伝達物質の枯渇が起こっているせいだとされています。
これらの伝達物質は注意力や集中力を維持したり、欲望を抑えたりするのに重要な役割をしており、枯渇は社会的な成功において不利に働く傾向があります。
実際、ADHDの人々を調べた研究では、ADHDが教育レベルの低さ、失業率の高さ、収入の低さ、さらに自動車事故や犯罪行為の多さと関連していることが示されています。
しかしADHDと政治の関係について調べた研究はほとんどありません。
特に普通の人とADHDの人で、言論の自由さ、複数の意見や声に対する寛容さ、政府機関への信頼感、そして自分の国の政治家への評価をどう感じているかについては全く知られていませんでした。
そこで今回、ハイファ大学の研究者たちは、ADHDが政治参加にどのような影響を与えるかを調べることにしました。
調査に当たっては2019年4月に行われたイスラエル国政選挙前に収集された1369人のデータを利用されました。
このデータでは被験者たちの ADHD の症状を測定する評価に加えて、さまざまな政治活動にどのように参加していたかや、政治に対する態度も調べられました。
結果、ADHDの傾向が強い被験者たちは、従来型の活動(デモ参加や政治家との接触など)とデジタル型の活動(ネットでの政治活動)の両方で、普通の人より高いレベルの政治参加をしていることがわかりました。
また政治における態度を比較したところ、ADHDの人々は他人の意見に対する寛容性が低下しており、他の意見を沈黙させ、自分と同じ意見だけを認めさせたいという意欲が強くなっていました。
これまでの研究でADHDの人は他人の意見に対して短気や不寛容であり、他人の話を遮ろうとする傾向が強くなることが示されており、同じ現象が政治的な意見対立でも起きていると考えられます。
また過去に行われた研究では、ADHDの人は公正感受性(Justice Sensitivity)が高いことが示されています。
公正感受性とは不正や悪に対する敏感さを示しています。
公正感受性が強いことは必ずしも悪いことではありませんが、しばしば対立する意見に対して過度に敏感になり、妥協を許さない姿勢がとられます。
そのためADHDの人が何らかの政治的な考えを持っている場合、異なる意見に強く反応し、結果的に政治参加を促していた可能性があります。
また対立する意見への妥協なき姿勢は、不寛容さの原因にもなっていると考えられます。
一方、政治に関する情報収集については、ADHDの人々は一般の人々と大差はなく、むしろ多くの人々が閲覧するニュースに触れる傾向がありました。
この結果は、ADHDの人々は政治参加のレベルが高いものの、肝心の政治に関する情報収集は消極的であることを示しています。
研究者たちは精神疾患を持つ人々の政治参加のスタイルを知ることは、精神疾患の理解においても重要であると述べています。