ホッキョククジラの妊娠期間は最長23か月
ホッキョククジラの妊娠期間は、ホッキョククジラの死骸からヒゲを採取・分析することによって推測されました。
クジラのヒゲは生涯生え変わることがなく、生まれてから死ぬまで時間の経過と共にそのときの体の様子を記録しています。
ヒゲを分析して時間とともに変化するホルモンを分析することで、そのホッキョククジラがいつ妊娠したか、どのくらいの期間妊娠していたかを知ることができるのです。
一般的に哺乳類は妊娠中、プロゲステロンというホルモンの濃度が高くなることが知られています。
そこで、ナディーン・リシアック氏らはホッキョククジラのヒゲについてプロゲステロンが上昇し、高止まりとなった期間を妊娠期間と定義しました。
複数のメスのホッキョククジラのヒゲを調査した結果、調査されたホッキョククジラの妊娠期間は20.9カ月で、妊娠期間が個体によってばらつきがあることがわかりました。
その中でも妊娠期間が最長だった個体は23.6カ月もの間妊娠していたことが明らかとなったのです。
これは哺乳類の中でもっとも長い妊娠期間と言えます。
動物たちの妊娠期間、最長と最短は?
ここで哺乳類の妊娠期間についておさらいしておきましょう。
妊娠期間がもっとも短い動物はオポッサムで、わずか12日と言われています。
一方、妊娠期間がもっとも長いと言われているのはゾウで、その妊娠期間は22カ月です。
長い間妊娠している理由は胎児の成長スピードが非常に遅いためだと言われています。
野生下ではある程度の大きさで産まないと捕食される危険がありますから、生まれた赤ちゃんの生存率を少しでも上げるためにゾウはお腹の中で赤ちゃんを守っているのです。
ちなみにゾウはかなり大きな哺乳類ですが、哺乳類の大きさが長い妊娠期間につながるかというと必ずしもそうではありません。
ゾウより身長が高いキリンの妊娠期間は15カ月ですし、はるかに大きな体を持つシロナガスクジラも妊娠期間12カ月です。
このように動物の妊娠期間を見てみるとホッキョククジラの妊娠期間が非常に稀有なものであることがわかります。
本当にホッキョククジラは23か月「妊娠」しているのか
ただそのように考えていくとそもそもホッキョククジラが本当に23カ月妊娠しているのかという疑問も生じます。
この研究はヒゲのホルモンなどから妊娠期間を推測したに過ぎず、実際に妊娠しているところを観察したものではないためです。
実際、研究チームは発情期間が妊娠期間としてカウントされている、あるいは一度流産して再び妊娠した可能性などにも言及しています。
しかし、研究者たちはホッキョククジラの赤ちゃんが生まれたときの大きさがばらばらであることから、ホッキョククジラが出産時期をコントロールしているのではないかと推察しています。