アイソメトリック運動で血圧は下がる!
本調査では、合計1万5000人を超える被験者を対象とした270件のランダム化比較試験(対象者を2つ以上のグループにランダムに分けて運動の効果を検証する)が検討されました。
この実験では、計2分間のアイソメトリック運動を4セット行い、各セットの間には1〜4分間の休憩時間が設けられています。
その結果、顕著な血圧低下が表れたのは、1週間に平均3回のアイソメトリック運動を行ったときであると判明しました。
被験者に見られた血圧低下は、標準的な降圧薬(血圧を下げる薬剤)を服用している人と同程度のものだったとのことです。
また全体として心臓や血管系、自律神経系の機能改善も見られ、アイソメトリック運動が心血管疾患のリスク低下に役立つことが示されました。
アイソメトリック運動が血圧の低下につながった理由として、研究主任のジェイミー・エドワーズ(Jamie Edwards)氏は、筋肉を収縮させた状態で保持すると一時的に血管が圧迫されるが、これが解除されて筋肉が弛緩すると、血管への血流量が増加して血の流れが良くなるからと説明しています。
さらにアイソメトリック運動には、血圧低下の他にも様々な健康メリットがあるようです。
アイソメトリックで得られる健康効果とは
まず一つ目は「ケガの予防」です。
例えば、私たちは膝や足首の関節の動きを安定させるために靭帯を使っていますが、その周りの筋肉が衰えていると、靭帯に過剰な負担がかかり、損傷の原因となってしまいます。
前十字靭帯の断裂はその一例です。
しかしアイソメトリック運動で周囲の筋肉を鍛えることで靭帯にかかる負荷を減らし、大きなケガの予防につながります。
二つ目は「筋肉バランスの改善」です。
私たちには利き腕や利き足があるため、左右どちらかの筋肉群がもう片方より強く発達し、全身の筋肉バランスが悪くなることが多々あります。
これはサッカーやバレー、バスケットなど、左右どちらかの体をより多く使うアスリートにもよく見られるものです。
しかし筋肉バランスの悪さはケガのリスクを高めることにも繋がるため、楽観視できません。
そこでアイソメトリック運動により、弱い側の筋肉部位を狙って鍛えることで、筋肉バランスの改善が期待できます。
それからアイソメトリック運動は「リハビリにも打ってつけ」です。
ランニングやウエイトトレーニングのような高強度の運動とは違い、静止した状態で筋肉の収縮と弛緩を繰り返すため、ケガ明けの運動には最適です。
痛みと相談しながらメニュを変えることも可能ですし、また自分の体力に合わせてメニューを選べるため、運動未経験者でも気軽に取り組むことができます。
他にも「時間効率の良さ」や「日常生活に必要な身体機能の向上」など、アイソメトリック運動には多くのメリットがあります。
自分で好きなメニューを作って習慣化することで、健康で丈夫な体が手に入れられるかもしれません。