年齢ごとに「ゲームの種類」を変えた方がいい?
寄る年波に逆らうことは不可能であり、私たちの認知能力は年を重ねるにつれて落ちていくものです。
特に「ワーキングメモリ(作業記憶)」は20〜30歳の間にピークに達し、その後は年齢が上がるにつれて低下します。
ワーキングメモリとは、今やっている作業に必要な情報を一時的に保持し処理する能力のことです。
家事や仕事、人との会話においてワーキングメモリは欠かせません。
一方、これまでの研究で、デジタルゲームを遊ぶ習慣がある人は非ゲーマーに比べて、注意力やワーキングメモリが有意に高い傾向があることが報告されていました。
加えて、アクションやパズル、ストラテジー(戦略系)など、ゲームの種類によっても認知機能への影響が異なることが示唆されています。
そこで研究チームは、日常的にプレイするゲームの種類の影響が「年齢」に応じても変わるのかどうかを検証しました。
高齢者はパズル、若者はストラテジー系のゲームをすべし
チームは今回、デジタルゲームをプレイする習慣のある若年層と高齢者を対象にオンライン調査を実施。
参加者は18〜30歳の若年層の男女が209人、60〜81歳の高齢者の男女が181人です。
事前のアンケート調査では、スマホ・PC・ゲーム機のいずれかで週に何時間ゲームをプレイしているか、また習慣的にプレイしているゲームの種類は何かを聞いています。
その後、オンライン上で視覚空間のワーキングメモリと注意力(注意散漫を促す視覚情報を無視する力)を測定し、対象者の年齢と普段プレイするゲームの種類を比較して、どんな関係が見られるかを分析しました。
すると全体としては、高齢者グループの方が若年層に比べてワーキングメモリや注意力は低かったものの、より詳細な結果はプレイしているゲームの種類ごとに大きく違っていたのです。
最も顕著だったのは、パズルゲームを習慣的にプレイする高齢者では、他のゲームをする高齢者に比べて、ワーキングメモリと注意力の能力が高く、パズルゲームをしない20代の若年層と同程度のスコアを記録していたことでした。
これはパズルゲームが高齢者の認知機能のトレーニングに効果的であることを示します。
他方で、ストラテジー系を習慣的にプレイする高齢者では、ワーキングメモリと注意力の有意な向上は見られませんでした。
反対に、若年層ではストラテジー系を習慣的にプレイする人ほど、他の種類のゲームをする若者に比べて、ワーキングメモリと注意力が有意に高いことが分かりました。
ところが、アクションゲームやパズルゲームを頻繁にプレイする若年層では、同じような認知機能の高さは見られなかったのです。
研究主任のフィオナ・マクナブ(Fiona McNab)氏は次のように話します。
「従来の類似研究の多くは、アクションゲームにばかり焦点を当ててきました。敵にすばやく反応したり、ターゲットを追跡することが注意力や作業記憶の向上に役立つと考えられたからです。
しかし私たちの研究では、アクション要素は若者の認知機能に大きな利益はもたらしておらず、代わりにゲームのストラテジー要素(計画や問題解決)の方が注意力や作業記憶の向上につながっていました」
また以上の結果に男女の性差は見られなかったとのことです。
本研究の成果は、年齢ごとにプレイするゲームの種類を変えることで、認知機能を効率的に鍛えられる可能性を示唆しています。
スマホのパズルゲームだと「ロイヤルマッチ」「ディズニー ツムツム」「トゥーンブラスト」など、ストラテジー系では「三國志 真戦」「ロードモバイル」「新信長の野望」などが有名ですが、高齢者は前者で、若者は後者で遊ぶといい脳トレになるかもしれません。
チームは今後、なぜゲームの種類が年齢に応じて認知機能へ異なる影響を及ぼすのかについて明らかにしていく予定です。