1日3時間以上ゲームする子供は「認知スキルが訓練されている」
米国小児科学会のガイドラインでは、「年長児のゲーム時間を2時間以内に収めること」を推奨しています。
「ゲームのやりすぎ」は子供に悪影響を与えると考えられているのです。
先行研究でも、長時間のゲームがもたらす悪影響について扱ったものがいくつか存在します。
しかし、これらの研究のサンプルは80人未満と小さく、神経生物学的なメカニズムを解明するには至っていません。
では長時間のゲームにはデメリットしかないのでしょうか?
チャラン氏ら研究チームは、9~10歳の2217人の子供たちを対象に、認知スキルのテストを行うことにしました。
テストに参加した子供たちは、1日3時間以上ゲームをするグループと、ゲームを全くしないグループの2つに分かれます。
そして各グループに、2つのテストを実施。
1つ目は、画面に表示された矢印を見てから、できるだけ早く同じ方向のボタンを押す、というもの。
その際、「ストップ」という合図があった場合には、何も押してはいけないというルールもあり、衝動をどれだけ制御できるか測定されました。
2つ目のテストでは、最初に見た人間の顔と後から見せられた絵が一致するか尋ねられました。
これにより情報を記憶する能力が測定されます。
そしてテスト中、子供たちの脳をfMRIでスキャンし、それぞれの脳活動を確認しました。
その結果、3時間以上ゲームをするグループは、全くしないグループに比べて、どちらの課題もより早く、より正確にこなせると判明。
またこの認知スキルの差は、脳活動でも同様でした。
ゲームをするグループは、そうでないグループよりも、注意と記憶に関連する脳領域で高い脳活動を示していたのです。
研究チームは、「ビデオゲームが認知スキルのトレーニングにつながった」と推測しています。
さらに3時間以上ゲームしたグループは、視覚野の活動レベルが比較的低いという結果も出ました。
これも、ビデオゲームで繰り返しトレーニングした結果、脳領域が視覚処理の効率を高めた可能性があるようです。
とはいえ、今回の研究では因果関係を分析することはできていません。
ゲームが認知スキルを向上させるのではなく、認知スキルの高い子供がゲームを好んでいた可能性もあるのです。
また、ゲームのジャンルによっては認知スキルの発達の仕方に差があると考えられるため、「とりあえず長時間ゲームをすればよい」というわけでもなさそうです。
チャラン氏は、「画面を過剰に長く見続けることは、精神的にも身体的にも悪影響を与えます」と述べています。
しかし今回の結果は、バランスを保ちつつ長めにゲームをすることには、確かなメリットが存在することを明らかにしました。
現代では子どもでも長時間ディスプレイを見続ける生活は当たり前になりつつあるため、ゲームのもたらす影響はデメリットよりメリットの方が大きいかもしれません。