がん細胞に「がん」を辞めてもらう
体から腫瘍を排除するには、理論的に3つの方法が存在します。
1つ目は、外科手術などで体からがん細胞を物理的に摘出する方法。
そして2つ目は、抗がん剤などで、体内のがん細胞を全て殺害する方法です。
実際、現在のがん治療はこの2つの方法(外科手術や抗がん剤)が主流となっています。
ただこれらの方法は、がん細胞に対して行うには効果が限定的となっています。
というのも、がん細胞は殺されそうになると、普通の細胞に擬態して免疫の目を欺いたり、一時的に無毒化して攻撃から逃れるなど、殺しきるのが難しいからです。
またすい臓がんなど、外科手術で摘出すると逆に全身に転移が進んでしまう厄介ながんも存在します。
そこで近年になって着目されているのが、3つ目となる「がん細胞たちに、がんを辞めて普通の細胞に戻ってもらう方法」です。
人間社会で例えるならば、社会(体)に巣くうマフィア(がん細胞)たちに健全な職場を斡旋し、普通の社会人(普通の細胞)になってもらう方法と言えるでしょう。
マフィア構成員もがん細胞も同じく「しぶとい」性質があり、無理矢理排除しようとしても上手くいきません。
しかし普通の細胞に戻るという選択肢は、がん細胞も生存を約束され、体も健康を取り戻すことができるため、WIN‐WINの関係を築くことが可能になります。
コールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL)では、がん細胞を「転職」させて普通の細胞に戻す技術について6年間にわたり研究を続けており今回、肉腫細胞を筋肉細胞に変化させる試みに挑みました。
いったいどんな方法を使えば、がん細胞を転職させられるのでしょうか?