自由の女神は約30トンの銅から作られている
「自由の女神」は、アメリカ・ニューヨーク市のリバティー島に立つ巨大な彫像で、アメリカの独立100周年を祝い、フランスからの贈り物として、1884年にフレデリック・オーギュスト・バルトルディと、エッフェル塔を設計したことでも有名なギュスターヴ・エッフェルによって設計されました。
1884年にフランスで仮組みが完成し、その後、214個の部位に分解された状態でアメリカに送られて組み立てが始まり、1886年10月28日に除幕式が行われました。
自由の女神は、自由と民主主義、そしてアメリカへの移民たちの希望の象徴として、多くの人々に親しまれています。
そんな自由の女神ですが、完成当初は今のような鮮やかな青緑色はしておらず、光沢のある銅色をしていました。
自由の女神は、約30トンの銅を使用して作られています。驚くことに、これは435億のペニー(1セント硬貨)を作るのに必要な銅の量と同じです。
同じ銅製のペニーは鮮やかな銅色をしていますが、いったい自由の女神はどのような過程で今のような青緑色になったのでしょうか。
青緑色に変化する科学的理由
自由の女神が青緑色に変色していった過程には、もちろん科学的な理由があります。
自由の女神がニューヨークにやってきた当初、表面は光沢のある銅色でしたが、徐々に暗い茶色へと変色していき、その後、今私たちが見ている青緑色へと変わっていきました。
この変色の主な理由は銅と空気の酸化反応です。
まず、銅は酸素と反応して、赤みを帯びた「キュープライト(cuprite)」という化合物を形成します。
その後、さらに酸素との反応が進むことで黒色の「テノライト(tenorite)」が形成されます。
これらの反応により、自由の女神は、まず暗い茶色へと色を変えていきました。
そして、ここから青緑色へ変化していくには「硫黄」が関係してきます。
火山噴火のような自然現象では大気中に硫黄の成分が放出されます。さらに、人間も船や車、飛行機、工場などから多くの硫黄を排出しています。
この硫黄と水が反応することで「硫酸」が生まれます。大気中の硫酸イオン濃度は大気汚染の指標の1つでもあります。
硫酸が銅と反応すると「ブロシャンタイト(brochantite)」という青緑色の化合物が形成され、さらに多くの硫酸が反応すると「アントレライト(antlerite)」という鮮やかな緑色の化合物が形成されます。
そして、海の近くに立っている自由の女神には、一部に海のしぶきが当たり、海水がブロシャンタイトと反応することで、「アタカマイト(atacamite)」と呼ばれる別の緑色の化合物も形成されました。
自由の女神像は、この3種類の化合物によって青緑色に変わったのです。
なお、このように銅や銅合金が、酸素や水分、塩分などと反応することで金属上に生成される青緑色の化合物を、日本語ではまとめて「緑青(ろくしょう)」と呼びます。
これはあくまでイメージですが、時間とともに自由の女神の色が変っていくアニメーションがありました。
もしかすると自由の女神は25年から30年ほどで今の色に変化したのかもしれません。
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— Samuel Hammond 🌐🏛 (@hamandcheese) September 6, 2023