2色覚で世界はどう見えるのか?
私たちが見る色はすべて、光の三原色である「赤・青・緑」の光の組み合わせで作られます。
色を感じ取る目の視細胞にも、光の波長感度に応じて、L錐体(赤)・S錐体(青)・M錐体(緑)の3種類があります。
3つすべてを備えているのが「3色覚」です。大部分の人はこの3色覚を持って生まれます。
しかし3種類の細胞のどれかが遺伝的に足りないか、十分に機能しないために色覚異常を起こす場合があります。
これが「2色覚」です。
2色覚はかつて色が正常に知覚できないことから”色盲”などと呼ばれましたが、この言葉により「色盲の人はすべてが白黒にしか見えない」という誤解が広まりました。
これは大きな間違いで、実際は区別のつきにくい色があるだけで、2色覚でもさまざまな色が知覚されています。
そのため、日本眼科学会は正式に「色盲」や「色弱」という用語の使用を廃止しました。
また、2色覚は赤・青・緑のどれが識別できないかで次の3タイプに分けられます。
・赤を感じる視細胞がない「1型2色覚」
・緑を感じる視細胞がない「2型2色覚」
・青を感じる視細胞がない「3型2色覚」
1型2色覚は先天性色覚異常の約25%を占め、赤色が黒っぽく見えます。
2型2色覚は全体の約75%と最も多く、赤色に加えて緑色のものも黒や茶色っぽく見えます。
3型2色覚はほぼいませんが、青色が青緑っぽく、黄色がピンク色に、緑色が灰色っぽく見えたりします。
2色覚の人々が日常的に体験している具体例としては、
・熟れた赤いトマトと未熟な緑のトマトが区別できない
・信号の赤と黄色が分かりづらい
・充電完了ランプの色の変化が見えづらい
・カレンダーの祝日が色分けが識別できない
・緑の黒板に書かれた赤い文字が読めない
などがあるようです。
2色覚の見え方は、こちらのTOYO INKのページから疑似体験できます。
このように色覚異常についてはかなり詳細に分析されているので、3色覚の人でも2色覚の見え方を体験することは可能ですが、一方で、色覚の違いにより、日常的な色空間への視線の向け方や、そこから受ける主観的な色彩印象に変化があるのかは調べられていませんでした。
そこで研究チームは「絵画の鑑賞」をテーマに実験を行いました。