心臓には「鼓動の始まり」がある
研究チームの一員であるアダム・コーエン氏(ハーバード大学)は、心臓と今回の研究について次のように述べています。
「心臓は、人間の生涯で約30億回鼓動し、その間、決して休むことはありません。
私たちは、この驚異的なマシンが、どのようにして最初のスイッチを入れるのか知りたかったのです」
こうした疑問を抱くのはもっともなことですが、鼓動の始まりについては、これまで謎に包まれていました。
通常、私たちの鼓動は、心臓にあるペースメーカー細胞が指揮しています。
ここから電気信号が心臓全体に伝わることで、それぞれの心筋細胞中のカルシウムイオンの濃度が急に高まり、結果として心筋細胞が収縮するのです。
そして心臓全体でほぼ同時に心筋細胞が収縮することで、これが「鼓動」となり、ポンプとして全身に血液を送り出すことができます。
各細胞の見事な連動によって心臓は鼓動しているわけですが、この驚異のシステムの始動方法については様々な疑問や推測があります。
今回の研究チームにも、「最初の鼓動」に関しては次のようにいくつもの推測がありました。
「いくつかの細胞が拍動(収縮と弛緩)を開始し、拍動領域がゆっくりと心臓全体に拡大していくのではないか」
「あるいは、心臓の様々な部分が独立して拍動を開始し、最終的に連動するのではないか」
「また心臓は最初弱い鼓動で始まり、それが時間の経過とともに強くなっていくのではないか」
しかし結局のところ、上記の推測はどれも外れていました。