地球外生命体発見の最有力候補「エウロパ」
エウロパは木星の4大衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)の中で最も小さく、直径は約3100kmと、月より少し小さい大きさです。
1610年にガリレオ・ガリレイによって発見され、ギリシア神話のゼウスが恋に落ちたテュロスの王女エウローペーにちなんで名づけられました。
これは木星(Jupiter)がラテン語のユピテル(ゼウスのこと)に由来して名付けられているためです。
エウロパは表面が氷で覆われ、その下には液体の海が存在すると言われており、その海水の量は地球の海水の2倍にも及ぶとされています。
通常、ハピダブルゾーン(居住可能領域)と呼ばれる太陽から適度に近い領域に星がない場合、大量の液体の水は存在できません。
しかし、エウロパは太陽から遠いにも関わらず、液体の海を持っていると考えられています。
エウロパは木星の強大な重力により繰り返し引っ張られることで内部の地熱を生み出し、この熱が液体の海を形成していると考えられているのです。
この液体の海が存在することにより、以前からエウロパは生命体が存在する可能性を持つ、最も有望な場所の1つとされています。
地球外の星で生命が存在するのか?という疑問を考える際、まず最初に生命にとって欠かせない存在である「水があるのか」という点がカギとなってきますが、その水の存在という点については、エウロパはすでにクリアしているのです。
また、エウロパの海には、生命体に欠かせない元素の一つである酸素も地球に匹敵するレベルで存在すると言われており、宇宙で最初に生命体が見つかるのは、火星ではなくエウロパなのかもしれないと言われています。
そして今回、炭素が見つかったことで、宇宙での生命体発見にまた一歩近づきました。
エウロパには二酸化炭素が豊富に存在している
今回、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の最新の観測データから、エウロパの地下海洋に炭素が存在する可能性が示唆されました。
この観測は、ジェロニモ・ビリャヌエバ氏らが率いる異なる研究チームによって行われ、それぞれのチームがエウロパの氷の表面を詳しく調べました。
その結果、エウロパの約4分の1を覆う「カオス地形」と呼ばれる領域に、二酸化炭素が豊富に存在していることが明らかになったのです。
カオス地形は、主に火星やエウロパで見られる不規則で複雑な地形を指します。エウロパのカオス地形は、海水が氷を溶かす、または押し上げることによって形成された可能性が考えられています。このことから、炭素はエウロパの内部から供給されていることが示唆されます。
また、エウロパの表面では二酸化炭素は安定していないため、このことからも両研究チームは二酸化炭素の起源が海であるという同じ結論に達したのです。
研究チームの一員であるコーネル大学のサマンサ・トランボ氏は、このことを「エウロパの表面に見られる炭素は海から来たという観測上の証拠があると考えている」と述べています。
今回の発見は、エウロパの地下海洋が生命に適した環境である可能性をさらに裏付ける形となり、将来の探査に向けてますます期待を高めるものとなっています。
2030年、エウロパはさらに詳しく調査される予定
炭素は生命の基本的な構成要素であり、私たちの体や他の生物は炭素ベースの化合物から構成されています。
炭素は他の元素と結合しやすく、多くの異なる化合物を形成できるため、生命に必要な複雑な分子の構築に不可欠です。また、炭素ベースの化合物は生命体にとって主要なエネルギー源ともなります。
エウロパで炭素が見つかったことは、エウロパでの生命の発見にまた一歩近づいたと言えるでしょう。
さらに、2024年にNASAが打ち上げを予定している探査機「エウロパ・クリッパー」が、2030年代初頭にエウロパに到着する予定であるため、より詳細な調査に期待ができそうです。
また、欧州宇宙機関(ESA)の木星探査機「juice(ジュース)」も、2030年代初頭にエウロパに到着する予定です。
近い将来、地球外生命体の発見という、人類史上で最も大きな発見とも言えるニュースが飛び込んでくるかもしれませんね。