辛さの単位スコヴィル値とは?
唐辛子の辛さを示す「スコヴィル値(スコヴィル熱単位:SHU)」は、1912年にアメリカの薬剤師であるウィルバー・スコヴィル(1865〜1942)によって考案されたものです。
当初は唐辛子のエキスを複数の被験者(だいたい5人)が辛味を感じなくなるまで砂糖水に溶かし、その倍率をスコヴィル値としていました。
しかし、この値は被験者の主観的な味覚に頼っていたため、非常に曖昧でした。
そこで現在は、唐辛子に含まれる辛味成分である「カプサイシン」の含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定し、客観的にスコヴィル値を評価しています。
例えば、同じトウガラシ属でもカプサイシンを含まないピーマンは0スコヴィルです。
他の例をあげると、ハラペーニョが約5000スコヴィル、鷹の爪が4万〜5万スコヴィル、ハバネロが25万〜45万スコヴィル、ブート・ジョロキアが100万スコヴィルとなります。
ちなみに護身用に改良された唐辛子スプレーが約160万スコヴィル、熊よけスプレーが約220万スコヴィルです。
そして今回発表された新しい唐辛子ペッパーXは約269万スコヴィルです。食べずともすでにヤバさが伝わってきます。
悪魔の実「ペッパーX」の誕生
ペッパーXを開発したのはPuckerbutt Pepper Companyの創業者で社長を務めるエド・カリー(Ed Currie)氏です。
カリー氏は世界で最も有名な唐辛子ブリーダーであり、実はペッパーX以前にギネス記録を保持していた「キャロライナ・リーパー」の開発も手がけました。
キャロライナ・リーパーは、ブート・ジョロキアとレッド・ ハバネロを掛け合わせた交雑種であり、164万スコヴィルという脅威的な辛さで2013年にギネス記録に認定されています。
「キャロライナ・リーパーを超える唐辛子を作ろう!」
カリー氏はこの10年間、自身が打ち立てたキャロライナ・リーパー(164万スコヴィル)を超える唐辛子の開発を淡々と続けてきました。
氏いわく、新種の唐辛子を作る場合、選抜育種によって望ましい形質が現れるまでに数年の月日が必要だという。
加えて、新たに誕生したハイブリッド種の果実を安定して栽培できるようになるには約10世代かかります。
そうしてカリー氏が生み落とした悪魔の実が「ペッパーX」でした。
ペッパーXの交雑に使った種は1つがキャロライナ・リーパーですが、もう1つは企業秘密として公表していません。
カリー氏によると「ミシガン州の友人から取り寄せた残酷的なまでに辛い唐辛子」だといいます。
ペッパーXはキャロライナ・リーパーのような真っ赤な果実ではなく、緑がかった黄色をしており、一見するとそれほど辛そうには見えません。
しかし、ペッパーXはまさに”食べる凶器”と呼ぶにふさわしい鬼っ子なのです。
今年8月に米ウィンスロップ大学(Winthrop University)の主導で、ペッパーXの辛さを測定する試験が行われました。
その結果、ペッパーXのスコヴィル値は、あのキャロライナ・リーパーを100万も上回る269万3000スコヴィルに達することが判明したのです。
これは熊よけスプレーをも上回る数値であり、フリーザが登場したときのような絶望的な戦闘力と言えるでしょう。
ここまで辛さが跳ね上がると、いくら激辛好きとは言え食べることはできないのではないか? という心配も生まれますが、このペッパーXを実際に食べてみた動画が開発者たちによって投稿されています。
ではその実食の様子を見てみましょう。