ズワイガニの神隠しが起きた「2つの原因」が判明!
チームはベーリング海の気温データ分析、ズワイガニの個体数や漁獲量の調査、ラボ内での生体実験を組み合わせた結果、神隠しの背後にあった2つの原因を特定することに成功しました。
それが「水温上昇」と「ズワイガニの異常繁殖」です。
まず1つ目の「水温上昇」ですが、気温データを調べてみると、2018年から約2年間にわたりベーリング海で記録上最大級の海洋熱波が発生していたことが判明しました。
これにより、例年と同じ量の海氷が作られず、ズワイガニの楽園である「コールドプール」ができなかったと考えられるのです。
またラボ内の生体実験によると、ズワイガニは水温が0°Cから3°Cに上昇することで、必要なエネルギー量が倍増することが実証されています。
必要なカロリー量の増加により、ズワイガニたちは例年に比べて、大量の食料を食べなければならない体になっていたのでしょう。
一方で、水温上昇そのものがズワイガニを死に追いやったわけではありません。
というのもズワイガニは12℃の水温でも生きられることが分かっているためです。
そこで2つ目の「ズワイガニの異常繁殖」が鍵となります。
実は調査の結果、海洋熱波が発生したちょうど同じタイミングで、ベーリング海のズワイガニの個体数は例年に比べて急増していたことが分かりました。
この過密状態とズワイガニたちが大食いになったことで資源が枯渇し、共食いの発生や餓死が続出したと考えられるのです。
また集団が密集した状態は、病気の発生率を引き上げた可能性もあるといいます。
これがベーリング海でズワイガニの神隠しが起きた事の顛末でした。
その他にも研究者は、コールドプールが生成されず浮力が高まったことで、ズワイガニの赤ちゃんたちが捕食者に食べられやすくなったことも要因の一つだろうと指摘しています。
個体数の復活には最低でも4年かかる?
ベーリング海のズワイガニの個体数は2021年以来いまだ回復していません。
この出来事は、ズワイガニの漁獲から得られる収入に頼っていたアラスカの漁業者にとって大きな打撃となっています。
アラスカの漁業者は毎年、ズワイガニ漁によって年間平均1億5000万ドルの収入を得ていましたが、2021〜2022年のシーズンでは、売上高が約2400万ドルにまで落ち込んでいるという。
さらに専門家の見立てでは、ベーリング海のズワイガニが漁獲可能なレベルまで回復するには最低でも4年かかると予測されています。
加えて、ズワイガニが激減したことにより、生態系のバランスが崩れる可能性も懸念されており、不安は尽きません。
果たして、ズワイガニたちが再び戻ってくるまでにベーリング海は無事でいられるのでしょうか?