暗黒ビッグバンの証拠は宇宙背景重力波に刻まれている
研究者たちは、宇宙の初期に起きた「暗黒のビッグバン」という現象による相転移(物質の状態が急激に変わる現象)が、重力波という時空における波紋を生み出した可能性があると述べています。
重力波は、水に石を投げ込んだときに生じる波紋のようなもので、2016年に初めて検出されました。
このときの重力派はやってきた方向が特定されており、ブラックホールや中性子星などの高密度天体の衝突によって生じたものと考えられています。
しかし重力波には宇宙マイクロ波背景放射(CMB)に似た「背景のハム音」と呼ばれる別の種類の重力波が存在すると考えられています。
(※「背景のハム音」とは、宇宙の背景に常に存在する、低レベルで持続的な重力波の信号を指しています。)
2021年6月、北米ナノヘルツ重力波観測所(NANOGrav)の天文学者たちは、この「重力波の背景ハム音」を実際に検出することに成功します。
Congratulations to NANOGrav for detecting evidence that gravitational waves fill the cosmos.
These ripples in the fabric of space happen when massive objects like black holes circle one another before colliding. The result brings us closer to understanding how galaxies evolve.… pic.twitter.com/AuXBgkZkb7
— NASA (@NASA) June 29, 2023
一部の研究者は、この信号が巨大なブラックホールの衝突から来ていると考えていますが、宇宙の初期に起こった相転移からの信号である可能性もありました。
そこで今回、研究者たちが検出された重力波背景ハム音を分析したところ、驚くべきことに、暗黒物質による2度目のビッグバン「暗黒ビッグバン」が起きた場合と合致する結果になりました。
現在、重力波信号をより詳細に検出する試みが進行中であり、欧州宇宙機関のレーザー干渉計宇宙アンテナも2037 年に打ち上げられる予定です。
編隊を組んで飛行する3機の宇宙船の間にレーザービームを送り、重力波を精緻に測定するのです。
もしこの重力波の「ハム音」に方向性が見られる場合、特定の方向で起こったブラックホールや中性子星などの衝突による波紋と考えられます。
しかし方向性がみられず、宇宙背景放射のようにどの方向からも同じような値(重力波のハム音)が検出された場合、それは宇宙初期の未知の相転移の信号、それも宇宙背景放射とは異なる大爆発の痕跡、すなわち暗黒ビッグバンの証拠となるでしょう。
そしてその瞬間、かつてのビッグバン否定派が体験したように「暗黒ビッグバン(笑)」「2度目のビッグバン(笑)」という嘲りから「笑」が取れて、私たちは真顔で受け止めることになるはずです。