画像
Credit:Canva . ナゾロジー編集部
space

宇宙が生まれて数週間後に暗黒物質を生む「2度目のビッグバン」が発生してた (2/3)

2023.11.14 Tuesday

前ページ「そもそもビッグバンとは何なのか?」相転移の視点から解説

<

1

2

3

>

暗黒物質は2度目のビッグバンで作られた

そもそも暗黒物質とは何なのか?

そもそも暗黒物質とは何なのか?
そもそも暗黒物質とは何なのか? / Credit:XMASS

暗黒物質は直接見ることができない物質です。

暗黒物質は、電磁力に反応せず、光を放射、吸収、反射しないため、直接観測することはできません。

そのためもし重さ10㎏の暗黒物質の拳(暗黒拳)で殴られたとしても、通常の物質でできた私たちの体は何も感じることなくすり抜けてしまうでしょう。

暗黒物質が何であるかはまだわかっていませんが、重力を発したり、重力の影響を受けることだけは判明しており、その存在の証拠も観測されています。

その最たる例が銀河を回る星々の動きにみられます。

銀河系の星々はニュートンの運動法則に従うならば、中心部の星は早く、外縁部の星はゆっくりと銀河を回転しているハズです。

銀河系の星々の回転速度は暗黒物質の重力の影響を受けている
銀河系の星々の回転速度は暗黒物質の重力の影響を受けている / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

太陽系の惑星でも一番内側の水星の公転速度は速いですが、海王星や冥王星はゆっくりとした速度で公転しているのと同じです。

しかし銀河の星々の回転速度を調べたところ、銀河系の中心部も外側もほぼ同じ速度で回転していることが判明します。

(※つまり外側が想定よりも早く動いていたのです)

この状況をニュートンの法則に基づいて計算を行ったところ、目に見える物質のおよそ10倍の「何か」が銀河全体を包み込んで、重力を発しているという結果が得られます。

この見えない何かが「暗黒物質」と呼ばれる存在です。

既存の理論では、いわゆる暗黒物質もこのビッグバンによって生成されたとされています。

再び水の蒸発で例えるなら、ビッグバン前の宇宙を砂糖(通常の物質)と塩(暗黒物質)が溶けている状態の水だとすると、ビッグバンによって水が気化(相転移)したことで砂糖の結晶と塩の結晶が両方一度に現れたと言えるでしょう。

暗黒物質をうみだす暗黒ビッグバン

暗黒物質をうみだす暗黒ビッグバン
暗黒物質をうみだす暗黒ビッグバン / Credit:Canva . ナゾロジー編集部

暗黒物質の理論が提唱されてから40年、物理学者は暗黒物質を検出するために、さまざまな検出器を構築してきました。

また検出器の多くは暗黒物質はWIMP(弱く相互作用する巨大な粒子)という仮想上の粒子であるとの仮説に基づいて作られています。

(※WIMPの存在が確認されれば、それは暗黒物質の正体の一端を明らかにすることになります)

またWIMPは、私たちが知る自然界の4つの基本力のうち、弱い核力と重力の影響を受けると考えられています。

つまりWIMP が存在する場合、原子核と相互作用するはずであることを意味します。

たとえるなら、海に浮かぶ小さなボートが波(重力)と風(弱い核力)の両方に影響を受けるように、WIMPもこれらの力に反応すると考えられています。

そのため既存の検出器はWIMPが原子核と衝突するときに発生する特定の信号、例えば小さな閃光やエネルギーの放出を検出するように設計されています。

暗黒物質の検出装置
暗黒物質の検出装置 / Credit:東京大学

しかし、これまでのところ、WIMPは発見されていません。

研究者たちは暗黒物質が検出されていない理由について、暗黒物質が弱い核力を全く感じない、つまり風(弱い核力)に影響されずにただ波(重力)だけに動かされるボートのような性質を持っている可能性を示唆しています。

その場合、重力が通常の物質との唯一のつながりとなります。

そして重力だけが唯一のつながりだとすると、理論上、暗黒物質の誕生は最初のビッグバン時に限定されなくなり、独自の誕生ルートを描くことが可能になります。

目に見えない兄弟が存在する場合、彼らが同じ誕生日によって生まれた双子であるか、別々のタイミングでうまれた普通の兄弟であるかを判別することができないのと同じです。

そこで研究者たちは、既存の観測結果をベースに、暗黒物質が作られたルートに対して新たな理論を組み立てました。

すると、通常のビッグバンの数週間後に「暗黒物質による2度目のビッグバン」が起きた場合に、現実の観測データと最もよく一致する結果になることが判明します。

また計算によれば、暗黒ビッグバンは陽子の10兆倍もの質量を持つ巨大暗黒粒子を生成することが判明しました。

(※研究者たちはこの巨大粒子を日本のゴジラから名前をとり「ダークジラ(darkzillas)」と命名しました)

2度目のビッグバンと言うと怪しげに聞こえるかもしれません。

しかし超高温高密度の点(宇宙の素)やインフレーション、そしてビッグバン(最初の)など、既存の理論も提唱された当時は「眉唾物」と考えられていました。

ビッグバンの名称も否定派たちが「ありえない」として嘲笑する目的でつけられた用語であることが知られています。

(※日本語で言えば「だいばくはつ(笑)」のようにバカにする目的で名付けられました)

しかし1960年代になると、明確な証拠が発見されました。

膨張する宇宙におけるビッグバンの「余波」
膨張する宇宙におけるビッグバンの「余波」 / Credit:WMAP . wikipedia

宇宙のどの方向からも、宇宙マイクロ背景放射とよばれる放射線の波が発せられており、これは膨張する宇宙におけるビッグバンの「余波」としてのみ説明できるものでした。

人類の目が宇宙の深淵からの信号に気付いたことで、初期宇宙の姿が明らかになった瞬間と言えます。

そして嘲笑目的でつけられた「ビッグバン」は、重要な理論を代表する名前となっていきました。

では暗黒ビッグバンにも宇宙背景放射のような大逆転を起こす、明確な証拠は存在するのでしょうか?

次ページ暗黒ビッグバンの証拠は宇宙背景重力波に刻まれている

<

1

2

3

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

宇宙のニュースspace news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!