母親の脳は子供が報酬を得るときに最も活性化!
本調査では、2〜6歳の幼児をもつ中国在住の母親31人(20〜45歳)を対象としました。
母親は全員が結婚しており、心身ともに健康で、少なくとも大卒の学歴を持っています。
母親たちは実験で、スクリーン上に表示される「赤」または「緑」の点に素早く反応し、指示された色に合うボタンをできる限り早く押すゲームを行いました。
色の付いた点が表示される前には、正解すると「母親自身(S)」「子供(C)」「慈善団体(D)」のいずれかに報酬が与えられることを示すサインが示されます。
例えば、Sの表示が出た後にゲームに正解すると母親自身が報酬をゲットでき、Dが表示されると慈善団体に寄付されます。
ゲームは合計で480回行われ、母親にはハンドクリーム、子供にはジグソーパズル、慈善団体には現金の寄付の報酬が用意されました。
それからゲーム中の脳の反射速度と神経反応の強さを調べるために、母親は脳波検査(EEG)のヘッドセットを装着しています。
その結果、母親の脳の反射速度や神経反応の強さが最も高まるのは、自分自身ではなく、わが子が報酬を得られるときであることが判明したのです。
慈善団体への寄付のときは、脳の反射時間や神経反応の強さは最も遅く/弱くなっていました。
これは報酬系に関する従来の報告とは違い、母親が自分自身よりも子供の利益を優先していることを脳レベルで示した貴重な成果です。
また実験後のアンケート調査でも、母親たちは自分や慈善団体より、わが子が報酬を得られるときに最も真剣になり、また大きな喜びを感じたと報告していました。
子供の頃、母親が「私は良いからあなたがもらいな」とか「あなたが食べな」と譲ってくれた経験があるでしょう。
なんで譲ってくれるんだろうと子供心に思ったかもしれませんが、母親は自分が何かを得るより、子供が何かを得る方が嬉しく感じているようです。
これを受けて研究主任のヤン・チャン(Yan Zhang)氏は「母親においては、自分の子供が報酬を得ることの優先順位が報酬系における自己優位性を超えている可能性を示唆するものだ」と説明しています。
その一方でチームは、実験に参加した母親のサンプル数が少ないことや、全員が未就学児の母親であること、および大学教育を受けていたことで限界があることに注意を促しました。
子供の年齢や母親の教育レベルの幅を広げて再調査すると、結果も少し変わってくるかもしれません。
また父親を対象にするとどうなるのかも同時に調べることで、面白い結果が得られるでしょう。
もし父親の脳の反応速度が上がらなければ、子供としてはショックですね。