母から子への愛情は「自分が一番」を超えうるか?
脳における「報酬系(reward system)」は、嬉しい出来事や満足感を得る経験を介して活性化する神経システムです。
報酬系が反応すると、同時に脳内ホルモンの一つである「ドーパミン」が分泌され、私たちの内にやる気や元気の感情を引き起こします。
しかし報酬系にまつわる先行研究は一貫して、私たちの脳は他者のために報酬を得るときよりも、自身のために報酬を得るときの方がより強く速く反応することを示していました。
友達が宝くじに当たったり、同僚が先に昇進するよりも、自分がそうなった方が心理的にも生活面でもメリットが大きいので当然と言えるでしょう。
結局、私たちは自分が可愛いのです。
その一方で、脳の反応の速度や強度は、報酬が得られる人との親密さによっても変化することが分かっていました。
例えば、仲のいい親友のために報酬を得ようとすると、まったく見ず知らずの他人のために頑張るときよりも脳の反応が良くなるのです。
とは言っても、自分自身のために頑張るときに比べると脳の反応はどうしても劣ります。
ですが、最も強い絆で結ばれている「母親」と「子供」ではどうでしょう?
皆さんも過去を振り返って、自分に嬉しい出来事があった際、母親が我が事のように喜んでいるのを幾度も目にしてきたはずです。
そこで研究チームは今回、母親がわが子のために報酬を得るときの脳の反応を実験で調べることにしました。