VR世界の体験と現実の肉体の奇妙なリンク

SFの世界では「VR世界でのリアルすぎる体験によって、現実の肉体に影響が及ぶ」という設定がしばしばみられます。
例えば、「マトリックス」のような映画では、VR世界での死が現実の死に直結するという考え方が示され、「体は心なしでは生きられない」という理由で説明されます。
このような設定はVR世界での行動にリアリティを与える要因となっています。
しかし現実の科学では、現実世界でVR体験が肉体に影響を与えるかどうかについては議論があります。
精神的ショックや3D酔いなどVR体験が現実の身体に与える影響は確かにありますが、物理的接触に起因する感覚、特に「触覚」に関しては、VR世界と現実世界を繋げることは難しいと考えられています。
一方で、VR技術の普及に伴い、VR世界での接触体験が現実の肉体に奇妙な感覚を引き起こすという報告が増えてきました。これはVR感覚(ファントムセンス)などの言葉で表現されています。
(※特にSNSなどにあるVRコミュニティーでは多くの報告があることが判明しました。特に「濃厚な身体的接触」を再現したVRのアダルトコンテンツでは顕著でした。同等の報告は立体音響を駆使したASMRユーザーからも報告されています)
もしこれが事実なら、人間の肉体は特別な装置を使用せずとも、VR世界と現実世界の触覚を自然にリンクさせていることになります。
この興味深い現象を探るため、ルール大学の研究者たちは、VR世界での接触が実際の肉体にどのような影響を与えるのかを調査することにしました。