「雌雄モザイク」が起こる仕組みとは
雌雄モザイク(gynandromorph)とは、1つの生物個体の中でオスとメスの特徴が明らかな境界を持って混在している状態のことを指します。
これまでに蝶やナナフシ、クワガタなどの昆虫、ニワトリやクジャク、ムネアカイカルなどの鳥類で確認されており、大抵は体の正中線を境に片方がメス、もう片方がオスとなっています。
では、どうして雌雄モザイクは起こるのでしょうか?
生き物の細胞内にある核には、体の設計図であるDNAを保管する「染色体」が含まれています。
その中で、オスメスの性別を決めるための情報を含んでいるのが「性染色体」です。
例えば、ヒトにはX染色体とY染色体の組み合わせで性別が決まり、XXなら女性、XYなら男性となります。
ところが受精卵の発生過程で、性染色体に異常が起きてしまうと雌雄モザイクとなる可能性があります。
特に昆虫や甲殻類では、受精卵が最初に分裂して2個の細胞になったときに、それぞれが体の右側か左側になることが決定されるので、性染色体が異常を起こしたまま発生を続けると「雌雄モザイク」が起きやすくなるのです。
(ちなみにヒトを含む哺乳類では、発生初期の細胞が体のどの部位になるかは決まっておらず、分裂を繰り返す中で徐々に決定されるので、そもそも雌雄モザイクは起きないという)
蝶を例にとってみましょう。
蝶の受精卵(正確には接合子という)が最初に分裂して2つの細胞ができると、片方は右半身、もう片方は左半身となります。
その後につづく細胞分裂では、分裂する前の細胞に含まれているDNA情報がまったく同じようにコピーされていきます。
そこで初っ端の分裂で性染色体に異常が起きていると、間違った情報のままコピーが続いていきます。
蝶の性染色体はZとWで、普通はZZでオス、ZWでメスとなりますが、これが1つの個体の中で一致せずに、最初の細胞分裂で片方の細胞がオス、片方の細胞がメスというコピーミスが生じると、そのまま半分オス、半分メスの蝶が生まれてしまうのです。
これと同じ現象が奇跡のロブスター「ボウイ」にも起こったのでしょう。
一方で、体色がツートンカラーになる明確な原因は分かっておらず、遺伝子の突然変異が関係していると見られます。
ボウイは今も元気に暮らしてます
ボウイはその後、港に持ち帰られ、専用の水槽の中で暮らしているといいます。
水槽内の環境にもすっかり慣れて、餌のニシンも元気にむしゃむしゃと食べているそう。
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今後は地元の水族館に寄贈されることも考えられています。
また専門家の話では、メスの生殖器を持つボウイはオスと交尾して産卵することも可能ではないかという。
今後、ボウイはどのような人生を送っていくのでしょうか?