上昇気流と下降気流の両方を利用したシステムで「24時間発電し続ける」ことが可能
新しく考案された発電機は、直径250m、高さ200mを超える超巨大な構造物です。
従来型と同じように、上昇気流を利用しています。
太陽放射で暖められた空気が中央のタワー(煙突)を通過して上昇する際、タービンを回転させるのです。
そして新しい部分として、この中央の「上昇気流タワー」の周囲を10本の「下降気流タワー」が囲んでいます。
この下降気流も温度変化によって生じます。
空気は暖められると上昇しますが、その空気が上空で急激に冷やされると、逆に下降気流が発生するのです。
新しいシステムでは、ポンプによって水を上部まで運び、スプリンクラーで噴霧。上部の「暖かく乾燥した空気」を冷却します。
この冷却された空気は周囲よりも密度が高くなるため、「下降気流タワー」を通って下り、下部のタービンを回すのです。
研究チームの設計によると、上昇気流のシステムと下降気流のシステムは同時に動作します。
また彼らによると、昼間の太陽放射によって空気の熱が蓄えられるため、夜間も発電を続けられるようです。
チームは、2つのシステムにより「発電は24時間365日続く」とさえ主張しています。
ちなみに、システムの効率が最大になるのは、「暑くて乾燥した地域」であり、シミュレーションでは、サウジアラビアの首都リヤドの気象を想定しました。
そしてシミュレーションの結果、新しい発電システムは、年間753MWのエネルギーを生成できると判明しました。
これは、従来の「上昇気流だけを用いた発電システム」の約2.14倍の電力を生成することを意味します。
とはいえ、年間753MWという電力は、「60Wの電球1500個を1年間ノンストップで使用できる量」であり、かなり微妙です。
現時点で研究チームは、ソーラーパネルなど他のシステムとコストを比較していませんが、新システムのサイズを考慮すると、発電効率に関しては一般的なソーラーパネルのほうが有利でしょう。
(ちなみに、日本に設置されている風車(風力発電機)1基が生成する電力は、年間3000MWほどなので、巨大なタワーを建設するくらいなら、風車を1基建てたほうが良いかもしれません)
しかも新システムは天候や季節の影響を大きく受ける可能性があります。
さらに、設置に最適な「暑くて乾燥した地域」では、冷却に必要な大量の水を用意するのが困難なので、この課題にも対処する必要があるでしょう。
これらの問題点を考えると、新しいシステムは「まだまだ改善を続けるべき」段階にあるのかもしれません。
それでもアイデア自体は興味深いものであり、二酸化炭素の排出を低減させるというメリットもあります。
また他の発電技術と組み合わせることで、より良い発電システムが誕生する可能性もあります。
今はまだ未熟な技術であっても、自然の中に私たちが見落としている利用可能なエネルギーがないか? それをより効率的に取り出す方法がないか模索していくことは技術開発の非常に重要なステップです。
これからの人類は、既に存在している「自然の力」を、もっと上手に利用していく必要があるのです。