評価が二極化しやすい映画はこれだ!
チームは二極化の指標として、映画レビューサイト・MovieLensのデータセットを用いました。
MovieLensでは、日本のFilmarksと同じように、それぞれの映画作品が星1〜5で評価されています。
このとき、ほとんどの映画の評価は3〜4の狭い範囲内でスコア付けされていますが、評価が二極化する映画は1〜5の広い範囲でスコア付けされる傾向があります。
チームはこの標準偏差(平均からのズレを表す数値)の大きさを利用して、評価が二極化している作品を選定しました。
MovieLensのデータセットは、1995年から2015年の間に収集された2000万件以上のレビューを対象としています。
その結果、最も標準偏差の高い、つまり評価が二極化している作品のトップ15はこうなりました。
上から順に、
1位:プラン9・フロム・アウタースペース(1959)
2位:パッション(2004)
3位:トワイライト〜初恋〜(2008)
4位:ピンク・フラミンゴ(1986)
5位:悪魔のいけにえ(1974)
6位:トランスフォーマー ザ・ムービー(1986)
7位:ブレア・ウィッチ・プロジェクト(1999)
8位:トランスフォーマー/リベンジ(2009)
9位:ベイブ (1995)
10位:コックと泥棒、その妻と愛人(1989)
11位:ジャッカス・ザ・ムービー(2002)
12位:タンク・ガール(1995)
13位:ロッキー・ホラー・ショー(1975)
14位:エビータ(1996)
15位:バイオドーム(1996)
ここからチームは、評価が割れやすくなる映画の3つの傾向を特定しました。
その1:低予算のカルト映画
これは『プラン9・フロム・アウタースペース』『ピンク・フラミンゴ』『ロッキー・ホラー・ショー』を代表とする、低予算で製作されたものの一部にカルト的な人気がある作品群です。
これらの映画は小規模の劇場で深夜に上映されることが多く、主に犯罪やインモラルなど、世の中的にタブーとされる過激なテーマがよく扱われます。
低予算ゆえにセットや衣装の作りが甘かったり、道徳的に反感を買いやすいのですが、一部のファンはそれを愛嬌として好意的に受け入れているのです。
その2:フランチャイズ映画
フランチャイズ映画とは、例えば『スター・ウォーズ』や『トランスフォーマー』『トワイライト』など、同じ舞台設定を共有したシリーズ作品群のことを指します。
近年だと、アメコミヒーローを主役とするMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)が絶大な人気を誇っています。
フランチャイズ作品は一般に、人気作品のシリーズ化による大衆受けを狙って作られるため、興行的に安定した成功を収めやすい傾向にあります。
その反面、作品ごとに大きなバラつきが出ないよう、お馴染みのストーリー展開にしたり、「人気キャラを出しておけば観客は喜ぶ」といった作りに陥りやすいため、根強い映画ファンからは何かと酷評されがちです。
その3:定番化したホラー映画
ホラーというジャンルは昔から、観客のターゲットが明確なため、作品の質と興行成績の間にほとんど相関関係がありませんでした。
ホラーの作り手たちは、一般大衆や映画評論家の意見など気にせず、ホラー好きのためだけに作品を作っていればよかったからです。
ところが70〜80年代にかけて、普段はホラー作品を観ない一般大衆にもヒットするホラー映画群がたくさん登場しました。
『悪魔のいけにえ』や『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』などがそれに当たります。
このように良くも悪くも時代の流れに乗った作品は、ホラー好きでない人々や評論家の目にも留まってしまいます。
すると、陰湿なテーマや過激な描写に強い拒否反応を示す人々が低評価をつけて、二極化しやすくなるのです。
評価が二極化しやすいジャンルとは?
またジャンルごとの調べによると、ホラーは最も評価が二極化しやすいことが分かりました。
やはりホラー作品は好きな人と苦手な人が分かれやすいようです。
ホラーに続くのが「ファミリー映画」でした。
少し意外かもしれませんが、ファミリー映画は年齢の離れた親と子の両方にアピールするという難しい課題があるため、評価のばらつきも大きくなると考えられています。
その後にはSF、コメディ、音楽・ミュージカル系と続いていました。
さらにMovieLensには「タグ」といって、俳優の名前や題材など個々の単語にヒットする作品を検索して、その評価を調べることもできます。
そこでチームが最も評価が二極化しやすい「タグ」の統計を取ったところ、トップ5位は「低予算」「キリスト」「おバカ」「ミュージカル」「ジム・キャリー」となりました。
おそらく「キリスト(Jesus)」が入っているのは、キリスト教が深く浸透したアメリカならではの傾向で、キリストの描写や解釈に強い反感を持つ人が一部にいるためでしょう。
先の「最も評価が二極化した映画トップ15」の2位にランクインした『パッション』(2004)などはその代表です。
キリストのタグは、日本なら織田信長がこの代わりになるかもしれませんね。
しかしここまで来ると、皆さんはもう評価の二極化しやすい映画を簡単にプロデュースできるかもしれません。
例えば、ジム・キャリーを主役にイエス・キリストを演じさせて、それを低予算かつミュージカル風に作ればいいのです。
もちろん、作品の評価を二極化させる要素はこの他にもたくさんありますし、国や文化によっても変わってくるでしょう。
ただ同じ映画を見て、絶賛する人もいれば酷評する人もいて、人々の間に賛否両論が広がり、白熱した議論が巻き起こる。
これこそ映画という表現の醍醐味ではないでしょうか。